インク止め式 コルク交換① S.S.S./サンエス

インク止め式万年筆のコルク(パッキン)交換の様子をご紹介します。今回は一般的なインク止め式ではなく、戦前のスワン(日本版)やサンエスによく見られる、コルク室の無い旧規格です。インク止め式は胴軸に直接スポイトでインクを入れ、中の中芯(ロッド)を下げてインクを流れるようにしたり、反対に止めたりする構造の万年筆です。そのインクを、中芯に被せたコルクパッキンで漏れないようにしてあります。コルクだから当然、数年で劣化してインク漏れを起こします。

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それでは分解して作業に入ります。胴軸内の中芯と尾栓を外し、そして中芯を胴軸から取り出します。通常止め式は、写真の胴軸下部の尾栓受けねじの中にコルクが入っています。そのコルクがシーリングの役目を果たし、下からインクが漏れないようになっています。このコルクが劣化するため、数年おきに交換する必要があるのです。

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ところがこのサンエス型は、コルク室にコルクが入っておらずコルク室そのものが中芯用の貫通穴があるだけのダミー(1ピース)です。この外したなんちゃってコルク室の奥に、特大コルクが入れられています。しかし依頼品はそこにもコルクが入っておらず、Oリングと他のゴムパーツが出て来ました。依頼者さん、自ら取り付けたとの事。一応これで水漏れは解消されているのですが、逆に中芯の動きが硬く、それを修理技術でのOリング取付を依頼されたという訳です。正直、愛好家・マニアの方でここまで出来るのは、凄いと思います。

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さてここからが、本当の作業の開始。前述のゴム類をすべて取り外し、ダミーと同じコルク室を作ります。インク止め式万年筆を製作するのと同じ要領で、無垢材から削り、ねじを切って接着します。 

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胴軸への取り付けが済んだら、本来のコルクに代わるOリング、そして中芯を入れるための穴を掘り、最後に蓋用のねじも切ります。白い物が、シリコン製Oリング。絶対に腐らないので、半永久的でGoo!

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もちろん留め蓋も作ります。コルクに対してOリングは高さがないので、その隙間を埋めるべくスペーサー一体型の蓋ゆえ、(蓋が)T字型、いや土管型にしました。普通のインク止め式のコルク蓋にはない、マイナスドライバー用の溝を入れます。Oリングでメンテナンスフリーの積りですが、それでも何かあった時のため容易に外れるようにです。

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こういう事です。

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サンエス型の旧規格でなければ、Oリング用の内径調節(広げる)~ねじ蓋製作までは同じ工程です。後はドライバーで蓋を閉め、中芯を胴軸反対(上)側から挿し込み、尾栓に取り付けます。今回の記事はインク止め式ユーザーでないと分かり難いかも知れません。いずれ、コルク室にコルクの入った(これが普通)一般的なインク止め式の修理をご紹介します。