嵌合リングの製作① Waterman Lady Agathe

ウォーターマンのレディ アガサという一昔前の小型万年筆。カートリッジ交換で首軸を胴軸に取り付ける時、収まりが悪いとのご依頼です。

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それもその筈、本来ここには金属製の嵌合リングがある筈が見事にありません。1990年代のシリーズで、現在のウォーターマン&輸入代理店はパーツ製造終了の理由で、修理を受け付けないそうです。こういうケースで難しいのが、ここを製作しようにも見本となる現物がないこと。例え破損していても、普通はオリジナルの現物を見ながらその形通りに作る訳ですが、それも叶いません。それに何度か手掛けた事があるペンなら問題ありませんが、レディ アガサの修理は初めてでした。

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ちゃんと機能してくれれば、オリジナルと多少違っても構いませんという事で、お引き受けしました。早速古いカタログ写真やウェブサイト(感謝!)を参考にして形を確認し、製作に入ります。首軸と胴軸の外径から、ベース材がΦ10mmもあれば足ります。加工が容易で腐食しない真鍮材から削り出します。

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外形と寸法がオリジナルに大分近づいた(想像)ところで、削り終了です。

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ベース材から切り離したら、バリ取りを行います。

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首軸に仮付けして、胴軸に上手く収まるか、キャップの嵌り具合はどうかをチェックします。胴軸に捻じ込むと、違和感なくストッパーの機能を果たしてくれました。キャップの収まり具合も問題なしです。

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この後リングを一旦外して仕上げ研磨を行い、首軸を含めた全体を洗浄すれば完了です。今回は一部ジュエリー作りに近い作業でした。古いモンブランの嵌合式キャップのモデル等、この修理方法は結構応用が利きます。

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