多機能ペン(2色ボール・ペンシル)のクリップが開きすぎ、挟めなくなったという修理のご依頼です。オロビアンコというブランド。
真横から見るとこんな感じ。何の事はないように見えますが、事はそう単純ではありません。クリップを曲げ戻して直そうにも、クリップが外れません。結果、元に戻せない状態です。お客さんによるとメーカーに問い合わせたところ、直すのではなくペンの上半分を総とっかえになるという返答を受けたとのことです。人から贈られて愛着がある1本故、それも嫌なので当工房に依頼されました。
クリップを留めている蓋ねじ部分が、消しゴムを入れるコネクトパーツと一体になっています。確かにこれは難しいですね。ペンチで摘むにも、クリップの付け根が邪魔して上手く出来ません。ゴム板で回そうとしても、ビクともしませんでした。少し嫌な予感がしました。工具を上手く引っ掛けられないどころか、もしかして製造組立段階で接着されているかも知れないからです。
考えた末、消しゴムが入っていた穴に金属棒をきつく噛ませて引っこ抜く方法で進めることにしました。ぴったりの芯棒がなかったので、近いサイズの真鍮を穴にぎっちり入るよう削りました。
きつくセットして真鍮棒側、ペン本体側の両方にゴム板を当てて力いっぱい回そうとしました。けど、さっぱり効果がありませんでした。手でやるのを諦め、芯棒側を轆轤にチャッキングして、動力(モーター)を使わず足踏みでグッ、グッと少しずつ回したらやっと反応があり緩み始めました。車の運転で言えば、ロー(1速)で意図的にバッと飛び出す感じです。
悪い予感は的中しました。外れたコネクトパーツの内ねじ部には、接着剤の跡がはっきり認められました。これでは、ちょっとやそっとでは外れない訳です。つまり最初から修理やメンテナンスを考えられていない作りだったんですね。それは別にこのペンに限った事ではなく、価格帯によってここをどうするか(製造・販売コスト上)微妙なのが実情のようです。個人的には、それでもいざと言う時のために、なるべく外せるように作って頂きたいものです。
無事クリップの広がりを矯正し、外したパーツも締め直して修理完了です。当たり前の話ですが、クリップのバネの能力にも限度があります。皆様も愛用のペンのクリップを過信して、厚手の衣服のポケットなどに挟まないようにして下さい。”開いて戻らなくなった”なんてまだいい方で、最悪折れてしまう事も・・・。