ペン先研ぎ出し・調整 細字化 B → F / PELIKAN 100

普段修理を中心に採り上げて参りましたが、ペン先の調整も決して少なくない大切な業務の1つです(と言うよりも、シャッターチャンスがなかなか無いのです。まして、持込みのお客さんの前で一々写真を撮るのも憚られます) 実際、最近はペン先調整のご依頼も増えています。”ちょっと引っ掛かる”、”前より書きづらくなって来た”等々。今回はお預かりの調整依頼です。しかもこのお客さんへの研ぎ出し調整は昨年もありましたので、書き癖やご要望は把握しています。

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ペリカンのアンティークで、字幅は恐らくM。長年使われたようで、実際このペンで文字を書くと、Bくらいに太くなっています。因みにアンティークに多い、ペン先が柔らかく撓るものは研ぎ出し調整の難易度も高いです。「これを手帳用に使いたいのでFぐらいに細くして欲しい。自分の筆記角度に合わせ、インク出はやや渋めで・・・云々」とメールで具体的なご指示をいただき、更に万年筆を握ったご自身の手も写真添付してくださいました。後ろの字は工房に届いて現状の太さをチェックするために書いたものです。

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ペンポイントの研ぎ出し作業に入ります。写真は荒削りの第2段回。砥石が回転している写真で見辛いですが、研ぎ出す字幅に合わせた溝を設けてあります。余談ですが、専用の物が売っている訳でもないので、これらは自分で彫った溝です。※先端に人工ダイヤが埋め込まれた工具を使用。また砥石も場所によって、表面の粗さが異なります。もちろん、超鋼やより硬い砥石等を使って(自分なりに)仕事しやすいよう仕上げる訳です。

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まだ途中ですが、1枚。

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ペンポイントがまだまだ大きく見えますが、ルーペを外した目線では結構小さくなっています。

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一旦表面を仕上げポリッシャーでさらい、試し書きに入ります。

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上の線や数字が研ぎ出す前、下が研磨後になります。お客さんの握り角度や筆圧を想定した書き方で、まあまあのタッチ&滑りにはなりました。ちょっとまだ太いのと、インク出をもう少し絞る必要があります。再び研磨レースに向かい、試し書きを繰り返します。

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一応「ここまで」と自分で判断したところで研磨・調整作業は終了です。しかし納品までには、ペン先全体の表面磨きや洗浄が待っています。削った粉塵で、表面まで細かい傷が結構付着してしまうのです。金磨きクロスでも取り切れない今回のような場合は、バフ掛けを行います。ペン先をマスキングすればその工程も省けるかと言えば、そうでありそうでない場合もあります。バフ掛けの様子は、また次の機会にご紹介します。

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