首軸装飾リング修理 / PELIKAN M400

「首軸からインク漏れがして手が汚れる。メーカーに出すと胴軸総取り換えで、料金も高い」というご相談でした。この年式でもう首軸割れかなと思って現物を見ると、クラックらしき個所は見当たりません。

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しかし仰るように、触れていると手がインクで汚れました。調べていくと、先端の装飾リングの所からインク漏れしているようです。しかしここはインク汚れが堆積するならともかく、インク漏れするような場所ではない筈です。

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原因が分かりました。腐食によりリングが割れており、そこからインクが滲出していたのですね。正確には本体内部からのものではなく、吸入の時インク瓶に首軸ごと浸したインクが入り込んで溜まっていたことになります。又はキャップ内部にこびり付いたインクがキャップを閉める度に付着したのもあるでしょう。ここが切れていれば、ティッシュ等で拭き取っても、奥までキレイにすることは出来ません。

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修理方法としましては、破損したリングと同じ物を作って再び首軸に取り付けます。でもその前に、首軸に残ったリング受けの溝の汚れ等を、綺麗に取り除きます。これをやらないと、作ったリングが綺麗に収まりません。リングは真鍮材を削って製作しました。

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隙間のないよう、ピッタリめに削ります。インクや水の侵入を防ぐためにも、念のため接着剤で留めます。

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修理完了後、後は実際にインクを吸入して数日平置きし、毎日手に取ってインク漏れ=手が汚れないかをチェックし、異常がなければ修理完了となります。結果、胴軸総取り換えよりかなり安く出来ました。こういった腐食対策からでしょうか、最近はマイナーチェンジでこの装飾リングを付けない万年筆も出て来ています。この類の万年筆をお使いの方は、長持ちさせるためにも、たまに水拭きしてあげてください。

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