セイフティ万年筆の修理~ニブキャリアー製作編 / WATERMAN 42 1/2

ウォーターマンのアンティーク万年筆2本の修理依頼がありました。1910年代のスポイト注入式で、使う時はペン先を繰り出すセイフティタイプです。今回お直しするのは2本とも同じサイズで、当然中のパーツもすべて共通規格です。ペットボトルのキャップで、そのコンパクトさが伝わると思います。上が金透かし彫り軸、下はエボナイトに一部金バンドが施された軸です。

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ご依頼の内容は①パッキンホルダー内の摩耗したコルク交換、②片1本の万年筆がペン先を繰り出せないので使えるようにして欲しい、というものです。コルク摩耗はインク止めやプランジャーと同様に、後ろから漏れて来るのでそのままではインクを入れて使うことが出来ません。さてご指摘のように、下側の黒い軸の万年筆がこれ以上ペン先が出て来ません。どこか変だと思ったら、ペン先の材質が14Kじゃない上、やや大きいサイズの物が取り付けられていました。

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上述のように、無理やりニブキャリアーに押し込まれたものだから、形が歪んでいる上、表面に裂け目が出来てしまっていました。上のユニットはWatermanオリジナルのニブが正しい位置にセッティングされているので、良い比較になります。この大きいペン先が、胴軸の繰り出し穴につっかえて途中までしか出ない原因でした。

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依頼者様は2本とも外国から入手されたばかりのこの2本を、これから使う積りだったそうです。従って、1本は入手した時点で既に改造を受けていたことになります。

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まず先に2本ともパッキンホルダー内のコルクを取り外し、Oリングを入れ、スペーサーを切削で作って取り付けます。これでシーリングの作業は一旦終了。

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変形した上にクラックによる穴が開いてしまったニブキャリアーは如何ともしがたいので、エボナイトで製作してしまいます。透かし彫り軸の無事な個体が見本になり、結果製作作業は割と円滑に進められました。

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完成。上がオリジナルで、下が製作した1本になります。写真では下の方が大きく見えますが、単にカメラのアングルです。ここはソケットや一体型の首軸と同じ役目を果たしますので、ペン先とペン芯をきつ過ぎず緩過ぎずに取り付けられるように、内径を仕上げる事が最も重要です。

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スパイラルシャフトに結合するためのクロスピンの穴も、ぴったり合うように空けます。

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どの道取り付けられていたスティールペン先は使えないので、お客さんに相談して大きさの合う14Kペン先を在庫から使うことになりました。ノンオリジナルとなりますが、1930年前後のドイツ製(デッドストック)で呑んでいただきました。柔らかいペン先がお好みの方で、納品後喜んで頂けてホッとしました。アンティーク品は色々と神経を使う事が多いですが、一方でパーツ製作で対応出来るケースは、近~現行品より多いとも言えます。なお、セイフティ万年筆の修理は以前にもご紹介しました。

セイフティ式の螺旋部製作 AURORA 1920's - 筆記具工房のブログ

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