ナタ研ぎ調整依頼

長刀研ぎ調整のご依頼を受け、その研ぎ出しの工程を一部ご紹介します。ご依頼の内容は、字幅を国産のM-MFの間で使い分けられるようにして欲しいというものでした。依頼者様からお預かりしたペン先は極太字のBB。かなり削り落とす事になります。つまりやや寝かせた状態で中字で、そこからペン先を立てるに従って中細字で書けるように研磨・調整を行う訳です。

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研ぎ出し前の、何も手を加えていないペンポイント。

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20分ぐらい研磨して、研ぎそのものはまだ50%です。

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大体85%ぐらいまで削り、角張った面を落としました。後はインクを付けて試し書き・微調整を繰り返します。この時点でやや書けるようにはなっていますが、まだ思うような字幅ではなく、また角度によってざらつきを感じます。

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完成間近の試し書き写真です。後は中細をもう少し細い字が書けるように仕上げて、一応の完成です。更にご本人様が引取りに見えた際、実際に握って頂いてご要望通りに(対面で)最終調整をします。

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 『長刀研ぎ』というのは、ご存知あるメーカーの特殊ペン先で名前も商品名だったと思います。全くと言って良い程知られていませんが、これとは別に『ナタ研ぎ』という名称はもっと前からありました。どうもこの『ナタ研ぎ』が長刀研ぎの名前の参考になったのではないでしょうか。数十年前まで、日本に輸入されたパーカーやモンブランの極細ペン先の研ぎが、今とは違いペンポイントの左右がかなり落とされた物でした。これを横から見ると”ナタ”のように見える事から、検品の職人に『ナタ研ぎ』と呼ばれました。最も、実際の長刀研ぎとはややペン先の仕上げも性格も異なります。さて過去たまに長刀に近い調整を依頼される事はありましたが、あまりタッチして来なかったので、今後もう少し研究してゆく必要性を感じました。