久し振りにインク止め式を挽き(作り)ました。長いお付き合いの業者様からのご依頼でした。胴軸φ18mm、キャップはφ20㎜とかなりの大柄です。
パッキンもナットも中芯も取り付けていない、インク止め式の素の状態です。ご存知、一般にはこのつまみ部分を”尻軸”又は”ブラインドキャップ”と言います。しかし万年筆の挽き物職人の間では、”ナナコ”と呼ばれていました。なぜナナコと言うのかは分かりません。私の先輩職人達も、理由までは知らなかったようです。
上記の3点すべて取り付け終えました。ここは修理の時と同じ要領です。
3本だけ磨いて完成。大きさ比較にモンブランの太軸(No.149)と一緒に。ご注文時にお預かりしたペン型は、国産の50サイズとほぼ同じです。サイズに関係なく、このペン先とペン芯がなければ万年筆のボディは製作できません。首軸の幅、穴径、深さ、そしてキャップのペン先が収まるスペース等すべてを合わせて作る必要があるからです。
普通漆や蒔絵を塗る場合は、ここまで研磨仕上げはしません。漆の乗りが悪くなるからです。一緒に作った他の軸は後から塗る予定の軸なため、ペーパー研磨までの仕上げ。
小さい万年筆と大きい万年筆、製作はどちらが難しいかと言うと返答に困ります。強いて言えば、そこそこの小ささならそっちの方が作りやすいです。反対に大きいと細かさは減るものの、削りシロが広く、そしてかさも多くなるため製作のエネルギーが増えます。例えばキシャゲと言う手に持った刃物で削る訳ですから、その抵抗が手に返って来るばかりか、被切削物も振動とかで狂い易いです。=(イコール)ぶれて芯が出ない。そうなると、芯出しという修正作業にまた時間を取られます。更にエボナイトは刃持ちが悪いため、刃物を研ぐ回数もより増えます。
納品後、蒔絵/漆を塗られてどんな感じになるのか、私も見たいものです。