セルロイド軸接合修理 / VISCONTI Michelangelo Grande

ヴィスコンティセルロイド製万年筆の胴軸を修理しました。
ミケランジェロ・シリーズの大型の方の万年筆、グランデ(プランジャー式)。

 

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胴軸のネジよりやや下の部分が水平に割れて、亀裂が一周してしまっています。また、小さい破片も数ピース欠損しており、ここからインクが漏れている状態でした。

 

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両用式なら別素材で胴軸全体を作ってしまう等で、実用上インク滲出は防げそうなものの、吸入式となるとそうはいかないでしょう。

 

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一旦割れると崩壊がどんどん進むセルロイドの、それも特に内部圧の強いプランジャー式と来れば、お預かり前から修理は無理か、キャップ以外全製作しかないと予測していました。ところが実際お預かりして、割れた胴軸の上下・首軸が上手く外れてくれた上、プランジャー・タンクがセルのボディとは別個体であることが分かりました。従ってボディの上部分を作って接合すれば修復出来るかも知れないと、俄かに希望が湧きました。なお、首軸は完全に無傷でした。
とはいえ、例え上手く外観を修復出来たとしても、内部からの漏れを完全に食い止められるかは、最後までやらないと分からない不安は払拭出来ません。それが修理する側の辛いところです。

 

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当初はエボナイトで一部を作るので、お直し出来ても黒色とグリーンセルの混合になってしまう旨は、お預かり前からお伝え済みです。依頼主様は、元通りになることは難しくインク漏れがなければ大丈夫です、というお気持ちでした。
ところが幸い、似たマーブルグリーンのアクリル材があったため、予定を変更してこちらを使う事にしました。胴軸の破断面を水平に削り取り、棒材から上半分を作って再現しました(右上)。

このようなケースでは以下の2通りの方法があります。
①まず内部がピッタリ合うように削り、胴軸に接合し、接着乾燥後に外径を忠実に再現。
②ネジを含め、すべて先に作っておき、最後に胴軸に接着接合。

今回は②を選択しました。理由はセルロイドは一旦崩壊すると、残った側も内部で損傷を受けている可能性が大きく、接合後に削りやネジ切りを行うと振動や衝撃が伝わって、作業中に破損を起こす恐れがあるからです。しかし崩壊の心配さえなければ、作業としては①の方がやりやすいのです。

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接着剤を使わない”仮接合”でインクや水の吸入&排出で、滲出が起きませんでした!

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後は接着し、乾燥を待って研磨作業を行えば完了となります。この研磨で、オリジナルのセルロイドとアクリルの境界をある程度目立たなく出来ました。

余談ですがプラチナ70周年記念万年筆やセーラー・レアロも、吸入方式は異なるものの、今回のミケランジェロ・グランデ同様、胴軸と吸入機構が別体の構成です。