割れたボールペンのボディ / DELTA Marina Piccola

デルタのマリナ ピッコラのボールペン。
床に落としてボディの先端が割れたしまった物で、分離した破片も紛失してしまいました。

メーカーがないため、輸入代理店でも修理は受け付けられなかったそうです。

f:id:hikkigukobo:20200527162059j:plain

f:id:hikkigukobo:20200527162110j:plain

 

残念ながらこれに近い色の材料はありませんでしたが、依頼主様は工房に持ち込まれた際にダークブルーのアクリル材を選ばれました。結果その材料を削って接合し、お直しすることが出来ました。なお、オリジナルも同じアクリル材です。

f:id:hikkigukobo:20200527162123j:plain

 

ピストン吸入式 ~すっぽ抜ける!?~ / PELIKAN 101N Tortoise Shell

「旧式ペリカンの吸入が上手く出来ない」という修理のご依頼を受けました。パッキンの収縮等でインクを十分に吸入しない、或いは機構の不具合で回転ノブが回らない・・・等々大体予想はつきます。ペリカンの1940年代のNo.101N トータス・シェル・ブラウンです。

さて届いた万年筆を点検すると、予想とは全く違う状態でした。パッキンの収縮+変形で吸入能力を失っているのに加え、ピストンを吸入位置まで上げようとする(排出位置)と、回転が止まらずそのままノブが螺旋棒ごと抜けてしまいました。ノブ受けの雄ネジが半分近くも欠損してしまっていました。当然ノブが噛み合う箇所は僅かで、とても吸入動作に必要な分を支えられません。

f:id:hikkigukobo:20200525170500j:plain

 

そこで欠けたネジをそっくりそのまま作って接合することにしました。お客さんには、再生する箇所のみ色が黒になることを了承頂きました。

f:id:hikkigukobo:20200525170534j:plain

f:id:hikkigukobo:20200525170547j:plain

 

破損個所をすべて切り落とします。そして接合するのりしろ箇所を5mm弱削って窪みの段を設けます。

f:id:hikkigukobo:20200525172256j:plain

 

オリジナルパーツとは別に、接合する部分を作ります。ピストンガイドがスムーズに通るだけの内径を空け、ネジを切ります。

f:id:hikkigukobo:20200525170603j:plain

 

ノブを被せてスムーズにネジで開閉出来る事を確認したら接合し、接着が乾くまで一旦放置します。その間、収縮したパッキンを作りました。

f:id:hikkigukobo:20200525170615j:plain

f:id:hikkigukobo:20200525170635j:plain

 

翌日、新たに作ったパッキンを装着し、すべてのパーツを組み直して作業は終了。吸入・排出を行う際、ノブががっちり安定していることを確認して修理完了です。

写真はノブを排出の回転が止まる位置まで開き切った状態です。

f:id:hikkigukobo:20200525170649j:plain



 

 

 

 

 

 

 

ウォーターマンCF用コンバーター① 修理編 / WATERMAN C/F Converter

今回はコンバーターの修理をご紹介します。コンバーターも消耗品と言えるので、修理して使えるようにする機会(ご依頼)はとても稀です。しかし今回のウォーターマンCF用のように、現在入手出来ないとか、廃盤規格の場合は修理して使えるようにせざるを得ません。CFとはウォーターマンの1980年代以前のカートリッジ/コンバーターの規格で、まず80年代にコンバーターの製造販売が終了、CFカートリッジも90年代末にカタログから消えました。因みにオリジナルのコンバーターを中古等で入手出来たとしても、ゴムサックの中押し式のため、残念ながらほとんどは経年により使えません。

 

f:id:hikkigukobo:20200518001353j:plain

これでもすべて新品(デッドストック)

f:id:hikkigukobo:20200517215432j:plain

 

取付け口(コネクタ)、サック、プレスバーを取り外しました。

f:id:hikkigukobo:20200517215614j:plain

 

上のように綺麗に取り外せなかった例。取付け口を壊してでも分解します。どの道、無傷でもこのコネクタは使わないため問題ありません。ここはメタルの枠をゴムで覆う形で作られています。

f:id:hikkigukobo:20200517215633j:plain

f:id:hikkigukobo:20200517215647j:plain

 

こちらは樹脂で新調したコネクタ。実は全く同じ寸法ではなく、サック取付け箇所はやや細めに削って作りました。オリジナルと同じ外径にすると、サックを取付け後、コンバーター本体に収まらないのです。

f:id:hikkigukobo:20200517215702j:plain

 

腐らないシリコン製のサックを装着させます。

f:id:hikkigukobo:20200517215717j:plain

 

サックの接着剤が乾燥したら、万年筆に取り付けて完了です。このCFのショートサイズのコンバーターで約0.5cc吸入しました。今日の一般的なヨーロッパタイプの8割程度になるのでしょうか。

f:id:hikkigukobo:20200517215728j:plain

 

こちらはCFの中~大型万年筆用のコンバーター。こちらも同様にシリコンサックに交換しました。 ※モデルはジェントルマンの第1型。

f:id:hikkigukobo:20200517215916j:plain

 

中型サイズのコンバーターを同じように修理して使えるようにします。

f:id:hikkigukobo:20200517215812j:plain

 

取り外したコネクタ。万年筆側の穿刺チューブに挿してもスカスカで安定しないため、こちらも同じ形に作る必要があります。

f:id:hikkigukobo:20200517215822j:plain

 

サックをカットして仮付け。まだ接着剤は塗布していません。

f:id:hikkigukobo:20200517215833j:plain

f:id:hikkigukobo:20200517215845j:plain

 

水で吸入量を確認します。

f:id:hikkigukobo:20200517215857j:plain

 

工房在庫の物を含め、数本まとめて直しました。

f:id:hikkigukobo:20200517215754j:plain

CF規格の万年筆をお持ちでお困りの方、又は今後入手予定の方は当工房へご相談ください。メタルのボディ、プレスバーのパーツが無事であれば十分直して使えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テレスコープ式尾栓の製作 / Montblanc MEISTERSTÜCK 136

テレスコープ吸入機構を持つ、モンブラン136の尾栓製作のご依頼です。
尾栓が完全に欠損した状態でのお預かりでした。

(通常では外れない)尾栓が無いため、写真のように尾栓を留めるネジが完全に露出した状態になっています。ここはまず見る事が出来ません。

またこの尾栓と本体を繋ぐネジが左ネジ(=逆ネジ)であることにより、二段伸縮のテレスコープの凝った動作を可能としています。

修理の要は特殊な左ネジを切り、テレスコープの空回り、所謂”遊び”のストロークを丁度良い位置で止まるよう計算しながら削り込む、やや難しい作業をこなせるかです。

f:id:hikkigukobo:20200430225148j:plain

 

尾栓の内部の削りが終わり、仮締めを行いました。

f:id:hikkigukobo:20200430225157j:plain

 

エンドの傘型部分を設け、本来あった縦縞のローレット装飾を入れました。オリジナルより若干ピッチは粗いですが、少しでも雰囲気を再現すべく設けました。欠損したオリジナルも尾栓のみエボナイトだった可能性が高く、刃物傷除去の中(ちゅう)仕上げに留め、敢えて艶出し研磨は行いませんでした。

f:id:hikkigukobo:20200430225207j:plain

 

この開いた位置で、ピストンシールの頭が胴軸内の頂点に当たります。

f:id:hikkigukobo:20200430225220j:plain

 

納品後、依頼主様から以下の写真を頂きました。

対になる同じデザインのクリップを持つペンシルと並べた一枚が、良く似合います。

お客さんのご依頼は、あくまで使えるようになればOKという内容でした。しかし、外形も出来る限りオリジナルに近付けられたのは、たまたま以前修理でお預かりしたNo.136の寸法図面を作っておいたからです。確かその時はキャップを作るご依頼だったかと記憶しています。

f:id:hikkigukobo:20200430225234j:plain

f:id:hikkigukobo:20200430225246j:plain

 

 

 

 

 

 

キャップネジ受け部の修復 / Delta Parthenope Old Napoli, DOLCEVITA Mini

胴軸の外ネジ(雄ネジ)が一部欠けた万年筆をお直ししました。今回2本とも”とば口”が同じ破損状態のデルタを採り上げました。
1本目はオールドナポリ
首軸を閉めた時に底面が接するネジの上が、水平状に一部欠損してしまっています。

f:id:hikkigukobo:20200419230406j:plain

f:id:hikkigukobo:20200419230419j:plain

f:id:hikkigukobo:20200419230432j:plain

 

樹脂材を継足し、ネジ切りする方法が最も丈夫かつ確実なのでそれを実行します。
メタルの内軸に樹脂が接着されているので、元のネジ部全体を外側から削り取ります。

f:id:hikkigukobo:20200419230447j:plain

f:id:hikkigukobo:20200419230506j:plain

 

継足し用の材料を削り、ネジを切ります。

f:id:hikkigukobo:20200419230520j:plain

 

新たに継ぎ足すネジ部が完成したら、先ほど一部を削り取った胴軸に接着で取り付けます。

f:id:hikkigukobo:20200419230532j:plain

 

接着乾燥後、表面を磨いて完成しました。

f:id:hikkigukobo:20200419230546j:plain

 

2本目はかなり小柄なドルチェヴィータ・ミニです。前述のように、オールドナポリと同じ(破損)状態でした。

f:id:hikkigukobo:20200419230935j:plain

f:id:hikkigukobo:20200419230621j:plain

 

元の破損部分を削り取ります。

f:id:hikkigukobo:20200419230953j:plain

 

新しい材料にネジ切りをして、胴軸に接着・研磨を行い完了。

f:id:hikkigukobo:20200419231007j:plain

 

見た目は全く同じ修理に見えますが、ボディサイズがやや異なり、ネジの規格も違います。従って、使うネジ切り工具であるクシガマも別の物を使いました。
(かなりマニアックな)余談ですが、オールドナポリの方は万年筆には一般的なピッチの0.7(mm)でしたが、こちらのドルチェヴィータ・ミニは0.5(mm)+3条ネジ!

オーナー様にとってこのような破損は悲劇でしょうが、破損個所がこちらでも何とかなる黒の樹脂だったのが幸いでした。

※依頼者様は各々別の方です。

f:id:hikkigukobo:20200419231019j:plain

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

ソケット製作その2 / KAWECO Sport , OMAS

以前もご紹介しましたペン先とペン芯を固定するソケット。
主にピストン式の万年筆に採用されているパーツで、今回は2例を採り上げます。

 

①カヴェコ・スポーツの限定品

ソケット破損というより、紛失の状態でお預かりしました。困ったことに、破損したオリジナルパーツがない=想像で作るしかありません。

写真のように、ばらばらな状態で送られて来ました。

f:id:hikkigukobo:20200413215209j:plain

 

胴軸内ネジのピッチ(規格)を確認し、内径、高さを決めて製作に入ります。ペン先&ペン芯に出来上がったソケットを差し込み、胴軸に仮付けして見ます。この際、ソケットの端面が首軸の端面より少し下がった位置でネジが閉め終わること、そしてペン先が首軸より何処まで顔を出した状態で収まるかも、長年の経験で決めます。

f:id:hikkigukobo:20200413215226j:plain

 

ネジの締り具合、ペン先&ペン芯の差し込み具合(適度な保持力)、握って筆記する際にペン先が紙面に当たる位置等が上手くバランスされていることを確認出来たら、完成です。

f:id:hikkigukobo:20200413215245j:plain

 

②オマス  パラゴン

こちらはソケットが割れたため、ペン先とペン芯がぐらついて固定出来ません。
破損したオリジナルパーツがあるとはいえ、痩せも著しく首軸に取り付けようとしても全く安定しない状態でした。またインク汚れにも見える青い変色は、洗浄しても一向に落ちませんでした。この樹脂素材が知りたいところです。

f:id:hikkigukobo:20200413215306j:plain

 

痩せた分、外径を少し太めに削って作ります。なお、オマスのソケットのネジはかなり細かく、前述のカヴェコやペリカンとはネジのピッチが異なります。

f:id:hikkigukobo:20200413215318j:plain

 

出来ました。右がクラック有のオリジナル。底部もぼろぼろ。よく見ると、ネジ山も何か所か崩れています。

f:id:hikkigukobo:20200413215330j:plain

 

しっかり固定出来たら完成です。

f:id:hikkigukobo:20200413215345j:plain

 

 

 

 

 

 

 

 

カートリッジ式のインク漏れ / PLATINUM 旧#3776バランス(エボナイトペン芯)

首軸周りからインクが漏れて手が汚れる、という修理のご相談を頂きました。
プラチナ#3776 の旧型で、ペン芯はエボナイト製。年式的にメーカー対応可能な筈です。しかしお客さんが問い合わせたところ、修理可能だけどペン芯も交換が必要で後年のプラスティック芯に替えなければならないそうです。依頼主様はどうしてもオリジナルのエボナイトペン芯のまま使いたいとのことで、弊所へ依頼されました。ここ同じ形状のペン先でも、ペン芯の違いでコネクターも別パーツになるのですね。

 

分解してみて、インク漏れの原因がすぐ分かりました。首軸内部でペン先とペン芯を固定するコネクターにひび割れが数か所ありました。このクラックから漏れたインクが首軸内壁を伝って、装飾リングから外側に出ていたことになります。当然、この辺りを握って書く訳ですから指はインクで汚れます。分解して取り外したら、元々数か所のクラックで崩壊寸前だったので、真っ二つに分断してしまいました。依頼された時点で既に限界だったのです。

f:id:hikkigukobo:20200108113057j:plain

 

f:id:hikkigukobo:20200108113133j:plain

 

破断したコネクターの寸法を測り、エボナイトで同じ物を作りました。

f:id:hikkigukobo:20200108135006j:plain

 

シーリング材を塗り、パーツをすべて元通り組み合わせて作業は完了。

後は洗浄してインクを入れ、数日置いてインクが滲出しないかをチェックします。組み立ててしまえば、どこをどう直したかパッと見には分かりません。強いて言えば首軸端面、装飾リングの内側の見えている部分がオリジナルのプラスティックからエボナイトに変わっている点ぐらいです。少なくとも、エボナイトで作ったので内部はオリジナルより丈夫に生まれ変わったことになります。

f:id:hikkigukobo:20200109112327j:plain