ペリカン万年筆の割と近年のモデルをお直ししました。メタルの胴軸内側=樹脂製インナーバレルが水平亀裂により、分離破損していました。ピストン吸入機構が分離した方の軸にネジ留めされているため、すべて一緒に外れてしまっていました。
ある日インクを吸わせようとしたら尻軸が空回りして、そのまま(写真のような状態で)ピストンごと外れてしまい、使えなくなってしまったそうです。
本体から分離しただけでなく、縦にもクラックがありました。
加工作業前の胴軸をボトム側から覗く。
まず胴軸本体側から加工します。破断面を綺麗に面取りするためです。万年筆ろくろ用のミツバネという刃物を使います。エンドミルのように、切削面を平らに仕上げるためです。
削って出て来たスクラップ。
破断面を綺麗に整えました。これから作る継足し部分と安定して接着するためです。
胴軸下部の継足し部分を削って作ります。材料となる透明樹脂はクラックの起こりにくい特殊な物です。※非石油系
必要な長さに切断、ネジ切りを行いました。因みに左ネジという、これまたペリカン独自の特殊な規格でした。
左は破損したオリジナル。
接着・接合しました。当然、破損する前はこのような状態だったことになりますね。
ピストン吸入機構を組み直して、修理が完了しました。この限定品M640 『ポーラー・ライト』はドイツ本国にも今回の必要パーツがもうないらしく、お客様によると日本の代理店で受けられなかったとのことです。