胴軸破損 一部作って接合 PELIKAN 101N Lizard

前にペリカン101Nの胴軸全体を製作する修理をご紹介しました。今回は一部製作+継ぎ足しで済むケースを採り上げます。経過写真を端折った部分もあって、少しイメージを持ちづらいかも知れませんが、ご了承ください😢

作業前の万年筆です。この万年筆は近年復刻版が出ましたが、こちらは1930年代のオリジナルです。ペン先ユニットを外し、尾栓・吸入機構を取り外してあります。これだけだと一見どこが壊れているのか分かりませんね。胴軸下の尻軸(尾栓)を取り付けるための内ネジがバラバラになっていました。このシリーズにはよくあるケースなのです。

f:id:hikkigukobo:20171127224016j:plain

 

蛇柄のスリーブを外すと中はこんな感じです。預けられた時点で、バラバラになったセルロイドの破片は取り払われていました。修理としましては残ったオリジナルの胴軸に、「破損した部分と同じ物を作って継ぎ足す」というものです。

f:id:hikkigukobo:20171127224729j:plain

 

先ずは割れた部分をひびの先端も残さず、削り取って平面にします。

f:id:hikkigukobo:20171127225230j:plain

 

次に透明アクリル材から、破損した胴軸下部を同じ形に作ります。実際は接着剤の糊代分だけ長く作ってあります。(背景のせいもあって)写真では判別しにくいですが、オリジナルと同じ内径(2段)に穴開けし、尻軸の受けネジを切りました。余談ですが、ここは通常とは逆の左ネジなので特殊工具が必要です。

f:id:hikkigukobo:20171127225720j:plain

 

再び胴軸上部の加工に戻ります。こちらも前述の糊代分の長さだけ外側を削り、作ったアクリルパーツとぴったり合うようにします。ここで難しいのが、”ぴったり合う”ように、削り過ぎない事! 一発勝負ゆえ緊張の瞬間です。

f:id:hikkigukobo:20171127230350j:plain

 

接着が終わりました。この日はこの依頼品の作業を一旦中断します。接着剤の乾燥を待つため、一日置きます。※材質等の理由から、瞬間接着剤は不向きです。という訳で、残りの時間は別の依頼品の修理にあてました。因みに今回はアクリルを染色しませんでした。

f:id:hikkigukobo:20171127230753j:plain

 

接着面が乾燥した翌日、リザード柄のスリーブを被せ、吸入機構を取り付ければ(後で)加工修理は完了です。内ネジも見えます。

f:id:hikkigukobo:20171127231145j:plain

 

ちょっとピンぼけてしまいましたが、表面から。染色の必要がないのは、スリーブを元通り被せたら、見た目は変わらないからです。以上のように同じ胴軸でも、破損個所によっては、一部製作&継ぎ足しで直る場合もあります。アンティークのペリカン100 / 100Nのシリーズは、胴軸下部の内ネジが弱いので、今回と同じ修理は過去何本も手掛けて来ました。当然、胴軸全体を作る作業よりは修理費も安く済みます。くれぐれもここはご自分で開けない事をお勧めします。

f:id:hikkigukobo:20171127231546j:plain