クリップの窓あけ / Links of London

キャップの破損したローラーボールのキャップ製作依頼です。英国のジュエリーブランドのペンのようです。

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胴軸のネジ受けのネジ部分を切っているところです。

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切り終わって、胴軸がスムーズに収まるか確認します。つまりキャップの開け閉め。

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クリップのデザインに様々な形がある事はご存知でしょうが、その”裏側”つまり通常は見えない、固定部分にも様々な仕様があります。例えばキャップ表面からも見える、付け根がリング状の物、クリップ表面のみ見える挿し込み型など。今回のローラーボールは後者の挿し込み型で、キャップの挿し込み穴(=窓)から入れ、ビスで裏側から固定されています。”窓”というのは、製作する側のメーカーや万年筆職人が呼ぶ用語で、一般には知られていません。

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という訳で、クリップを流用するためにも同じ『窓空け』の作業を施します。そこで写真のような刃物を使います。日本では昔からこのような工具が使われて来ました。※あくまで轆轤で製作する場合です。  クリップの付け根の幅や厚さに応じて、専用刃物も大小数個は必要なのです。刃物がへたったり、合うサイズの物がない場合は自作します。写真の風車のような刃物は、その辺で売られている五寸釘を加工して作った物です。釘そのもは”焼き”が入っていないナマなので、割と早く切れなくなるのが欠点です。

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窓あけ作業に入ります。刃物を轆轤に噛ませて回転させ、キャップスリーヴ側を手に持って固定します。写真では伝わりにくいのですが、手前のキャップトップ側を下方にぐーっと押し下げます。

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穴(窓)が空きました。大きめに空けるとクリップ付け根の左右脇スペースが目立ち、見た目が悪くなってしまいます。なので穴が表面に貫通した時点で止め、表面からカッターなどで軽くこじ開け、後はクリップを挿し込んで膜を破る要領で行います。こうすれば、外側から見て穴は最小限に抑えられます。この窓空けは結構難しいです。持つ位置がブレると、表面の穴も曲がって、結果クリップも斜めになってしまいます。また、決めた深さの位置からずれると、穴の上下位置も変わり、最悪留めビスが届かないなんて事もあります。轆轤の修業時代、この窓空けには泣かされました(;^ω^) この最後の作業の失敗で、折角作ったキャップがパァになってしまうからです。

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ロゴマーク入りトップを嵌め、裏側から留めビスを閉めて完成です。

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