ペリカンの首軸装飾リング製作② / PELIKAN M800 Wall Street

内容が似た修理記事が続きますが、今回も首軸リングの製作による修理です。数か月前に同じペリカンはM400 を採り上げましたが、今回はほぼ同じ内容でM800 になります。依頼主様がある社外品のインクを使ったところ、リングに腐食が起こったため、メーカー(輸入代理店)にパーツ交換の問い合わせをされました。ところがこの万年筆が少し古い限定品だったこともあり在庫はなく、「首軸部分総取り替えになり限定品固有の濃いグレーでなくなってしまう、インク窓(グレー)も一般品のインク窓(グリーン)になってしまうので諦めた」そうです。写真では見えづらいですが、ウォールストリートは首軸、尻軸、キャップスリーヴがすべて青みがかったグレーで統一されています。ここを定番モデルに変えてしまうと、インク窓のみならず首軸も黒になってしまいます。

前置きが長くなりましたが、作業途中の写真です。接着されているらしく、削り取らないと外れないため、少しずつ慎重に削ります。

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幾らか削ったところで、自然に首軸本体からリングが外れました。そして首軸側に残った接着滓を、やはり削る要領で取り除いていきます。

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同じ形に真鍮で製作しました。手前の2個が作った物で、上は取り外したオリジナルです。

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ぴったり合うか、仮付けして確認します。真横から見てリングと首軸の間に僅かに隙間があります。ちゃんと隙間なく奥までぴったり嵌るよう、一旦外してリング内径を僅かに削る微調整を繰り返します。

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外観と合わせ具合が問題ない所まで出来たら、オリジナルと同じように表面に金メッキを施します。前回のM400 のオーナー様がメッキを希望されなかったのに対し、今回は金メッキでのご依頼でした。お客さんによって費用や見た目等で、ご注文の内容は様々です。 ※写真、少しピントが合ってなくて済みません(;'∀')

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メッキ加工が終わったら接着によるシーリングを経て、修理完了となります。

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今回の依頼主様、M400 の時の修理記事を見て修理依頼を決意されたとのことです。当工房のブログ記事が役立って、光栄でした