インクビューのみの製作 / SOENNECKEN

同じメーカー製のアンティーク万年筆2本をまとめて依頼されました。割れたインク窓の修復(製作)と、吸入機構の修理(サック交換)です。ドイツのゾーネケンで、1935年頃の製品。2本とも同じ吸入方式です。即ち外観はペリカンのようなインクビューがありますが、ピストン式ではなくボタン吸入式という珍しい物です。ウォーターマンにも似たインクビュー付きの吸入式がありましたが、あちらはレバー式でした。

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2本ともインクビューに目立つクラックが数か所あり、接着では綺麗になりません。

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ご覧のようにインクビューは胴軸とネジで接合されており、この部分の製作で胴軸内部全体を作る必要はありません。ブルーセルロイド(イタリア製)の方がラインゴルト、手前のブラックセルロイド軸はプレジデントと言うシリーズです。 ※写っているラテックスのサックは元から付いていたもので、これらをシリコンサックに付け替えます。

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インク窓と胴軸を切り離したら、今度は首軸も取り外します。案の定、1本は取り外しの段階でさらに崩壊が進みました。外ネジが首軸側に持って行かれてしまいました。どの道、修理は外観以上に急を要していたという事になりますね。

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採寸・記録が済んだら、まずはインク窓の製作に取り掛かります。透明アクリルを使います。

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オリジナルの胴軸と、ネジがぴったり合い、且つつなぎ目からインクが滲出しないよう丁寧に削ります。これには、刃物をよく研いでいるか否かでインクの食い止めに掛かって来ます。

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製作の傷を取り、一応切削作業の方は終了。次に塗装に入ります。

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オリジナルかそれよりも幾らか明るい色で染色します。経年の汚れ、インクの汚れ等で(特定のメーカーに限らず)現状はやや色が濃くなっているのが普通です。従って新品当時の色を想像し、仕上げてゆきます。

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サックを交換取り付けし、インクビュー/胴軸の接着剤の乾燥を待ちます。後日吸入テストを行い、インクの滲出無く基準の量を吸入できてようやく完了となります。

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