万年筆製作日誌 / シガータイプ

お客さんからのご注文で葉巻型の万年筆を作りしました。

エボナイトの葉巻型で直径はなるべく細め、クリップなし、上下は丸く、全体をマット仕上げ、首軸を含むペン先ユニットはお客さんから預かった物を使う事・・・等々がご依頼の内容でした。

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制作に入ります。装飾パーツは一切なく、カットした材料2点のみを使います。直径はΦ14.2mmとしました。

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胴軸のネジ、内部の削りが終わりました。大型コンバーターが付いた首軸ユニットが収まるように、内部を加工してあります。この時点ではキャップを閉めても、外見はただの1本の長い棒です。

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そしてキャップ、胴軸とも側面や上下を削ってご注文通りの形に整えます。

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ここから下の刃物を使って、丸く仕上げます。普通のキシャゲでも削れることは削れるのですが、このキシャゲの方が仕事が早いのです。元からこのようなえぐれた形をしていた訳ではなく、長年使ってある程度短くなった頃に、刃物を加工して”丸め”専用にしたという訳です。1本だけの万年筆を作るにしても、轆轤仕事は実に多くの種類の刃物を必要とします。

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このように短時間の粗削りで軸を丸い形に加工できます。

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キャップ側の外形が完成。

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先に加工した胴軸の外ネジ。段下の縁(へり)の角を少し削ります。こうすることで、万年筆を握った時、持つ指の位置によっては角が当たっても、痛くありません。

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キャップ側の縁も同じく角を落とします。

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削り加工はすべて完了しました。この後研磨で刃物傷を取り除き、マット調に仕上げれば完成です。

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ご依頼のお客さんはとにかく万年筆は実用重視という方です。このペン先を持つオリジナルの万年筆が、ご依頼主様にとっては「今一つボディが細くて安定感に欠ける。そこでより握りやすく長時間筆記に安心して使える軸が欲しい」、というのがご注文のきっかけでした。漆を塗らないエボナイトは滑りにくいし、手に汗を掻く方にもお勧めです。納品からしばらくしていただいたご連絡では、握りやすいのであれから毎日つかっています、とのことでした。

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