ペリカン ペン先がグラついたら / PELIKAN 140, 400NN

アンティークのペリカン万年筆を入手されたばかりの方から、吸入の不具合と並んでよくご相談を受けるのが、ペン先のグラつき。ペン先とペン芯を固定する役目のソケットが取り付けられているのですが、 #120, 140, 400NNの後期型はここが割れていることがよくあります。#100時代からソケットも元々エボナイト製だったのですが、コストダウンからか前述のモデルは、途中~1960年代の製造中止までプレキシグラス製に切り替わりました。透明なこの素材は、ソケットのような付加の掛かる箇所には不向きで、割れやすい欠点があります。この状態ですと、例えば①筆記の際、すぐペン先が上下左右にずれてしまう、②ペン先とペン芯の間に大きく隙間が生じ、書きづらいどころかすぐインク切れを起こしてしまう、③ペン先とペン芯がやたら奥まで入ってしまう、反対にスポッと簡単に抜けてしまう等です。
※傷口を見えやすくするため、芯棒で広げたところ #140のユニットです。

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当工房ではソケットをオリジナルと同じ形にエボナイトで制作・取り付けることで対処しています。下の3個が制作した分。
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ちょっと難しいのは、最後の内径調整です。ペン先とペン芯を、オリジナルと同じぐらいの抵抗感を感じる加減でキリという刃物で削ります。まだ硬い分にはやり直せばいいのですが、ちょっとでも緩くしてしまったらアウト。丁度良い抵抗感になったところで、セッティングして胴軸に取付けて完了です。

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こちらは400NN。

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海外の販売サイトでも交換用パーツとして非純正品が売られていますが、素材はプラスティックです。大概1個からのパーツ販売なので、送料を除いた単価は弊所より安いです。ただ弊所は修理扱いとして取付け・調整まで行って基本料金内で収めております。アンティーク吸入式のペリカンで、ペン先グラつきの違和感を感じたら、首軸を真上から覗いて見て下さい。ペン先外側のソケット壁のクラック有無で簡単に分かります。