キャップ装飾リング製作 / Montblanc L139

キャップの縁が欠けた大型アンティーク・セルロイド製万年筆の、外形復元修理をご紹介します。実は写真を撮る前に作業に取り掛かってしまい、ご依頼時の姿をお見せすることが出来ませんでした。したがって、下のような状態からのスタートです。言い換えれば、記事用か記録用以外、普段いちいち写真を撮ったりはしません。

キャップ縁が割れて一部欠損した状態から、一番下のリングを取り出すために削り取ります。その時の切削の衝撃で、残念ながら切れてしまいました。切れた細い銀製のリングは元から脆かった訳ではなく、ただでさえ経年で外径が広がり、指でくるくる回ってしまう程変形・金属疲労を起こしていました。

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参考までに同じ症状のキャップを。取り掛かる前の139は正にこんな感じでした。これは同じモンブランの124 という更に古いモデルです。もちろん、ご依頼の内容も同じです。

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削り取ったセルロイドの縁部分を作る前に、リングを同じサイズに製作します。銀がないので、お客さんに相談して別素材の真鍮で対応する事にしました。先ずは同じ内径に内側から切削加工、カットしました。念のため、予備も作ります。

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外形も変形する前の予想サイズに削ります。そしてオリジナルの銀に近付けるべく、ロジウムメッキをおこないました。

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非常に肉薄なため、取り扱いに注意しないと指でつまみ上げる際に、簡単につぶれてしまいます。

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樹脂を削って2つのパーツを作ります。①糊代を含めた縁部分全体 ②細い・太いリングの間に入る黒いリング
オリジナルはこうした分割パーツではなく、セルロイド単体のキャップチューブに溝加工して、3個のリングを嵌め込んでいたようです。

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縁を床に置いてますので、キャップを立てたのと同じ状態なのです。そこに製作したリング、中間のエボナイトリングを取り付けたら、縁パーツは完成。内側の段は、キャップ本体に接合する際の、糊代になります。

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縁表面の樹脂を磨いて、キャップチューブ本体に接着して修復作業は完了しました。
一番上の細いリングは、オリジナルの銀のままです。このようなコントラストだから、似た色のロジウムメッキを施す必要があったのです。
写真では省きますが、キャップ(縁)内側の切削微調整が大切です。外径だけ完成しても、この内径の最終加工を行わないと胴軸後ろに安定して挿さらない上、開閉の際に、胴軸のネジ下をすぐに傷付けてしまいます。折角作った縁を壊さないように内側から削る、最後の大仕事になります。

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