ピストン吸入式 ~すっぽ抜ける!?~ / PELIKAN 101N Tortoise Shell

「旧式ペリカンの吸入が上手く出来ない」という修理のご依頼を受けました。パッキンの収縮等でインクを十分に吸入しない、或いは機構の不具合で回転ノブが回らない・・・等々大体予想はつきます。ペリカンの1940年代のNo.101N トータス・シェル・ブラウンです。

さて届いた万年筆を点検すると、予想とは全く違う状態でした。パッキンの収縮+変形で吸入能力を失っているのに加え、ピストンを吸入位置まで上げようとする(排出位置)と、回転が止まらずそのままノブが螺旋棒ごと抜けてしまいました。ノブ受けの雄ネジが半分近くも欠損してしまっていました。当然ノブが噛み合う箇所は僅かで、とても吸入動作に必要な分を支えられません。

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そこで欠けたネジをそっくりそのまま作って接合することにしました。お客さんには、再生する箇所のみ色が黒になることを了承頂きました。

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破損個所をすべて切り落とします。そして接合するのりしろ箇所を5mm弱削って窪みの段を設けます。

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オリジナルパーツとは別に、接合する部分を作ります。ピストンガイドがスムーズに通るだけの内径を空け、ネジを切ります。

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ノブを被せてスムーズにネジで開閉出来る事を確認したら接合し、接着が乾くまで一旦放置します。その間、収縮したパッキンを作りました。

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翌日、新たに作ったパッキンを装着し、すべてのパーツを組み直して作業は終了。吸入・排出を行う際、ノブががっちり安定していることを確認して修理完了です。

写真はノブを排出の回転が止まる位置まで開き切った状態です。

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