アウロラ 2009年の限定モデル『ルナ』の万年筆をお直ししました。インク貯蔵部、いわゆるインクビューの所から水平にポッキリ折れてしまっています。実は2年前に一度接着でお直ししてありますが、最近再びインクが滲んで手が汚れるとのことでお預かりしました。
水平に破断した軸は、接着でも強度はやや落ちます。おまけに破断面が複雑で、両用式ならともかく、ここに直接インクが触れるピストン吸入式なため、再接着で滲出を食い止めるのは難しいでしょう。考えた結果、内部をそっくりそのまま切削で作って取り付けることにしました。
そのためには、作るよりも先に割れたアクリルの残骸を綺麗に削って取り除かなければなりません。オリジナルでもインク貯蔵部は首軸と接着されているため、壊さないようにすべてを削り取るのに小1時間はかかりました。
残滓の除去作業が終わりました。ネジ+接着で作られていました。
今度は胴軸側も、割れたインクビューの透明アクリル部分を残りなく削り取ります。一連の上下の削り取りを終えて、ようやくインク貯蔵部の製作に入れます。
繰り返しますが、オリジナルのインク貯蔵部は透明アクリルです。この材料は一度ひびが入ると一気に崩壊する恐れがあります。同じ透明でも逆に柔らかく割れにくいセルロース系樹脂のアセテートを使って製作します。
仮付けして2個のリングを嵌めて、ぴったり収まるかを確認します。
削りの微調整を繰り返し問題ないところまで仕上がったら、洗浄してすべてのパーツを接着等で取り付けます。
接着乾燥後インク吸入の試験を終えて、修理完了となります。