インクタンクの製作②  / AURORA Jubilaeum

以前にも採り上げたアウロラのピストン吸入式の、それも全く同じ壊れ方をした万年筆の修理を依頼されました。限定品のユビレウムというモデルです。ボディのデザインが異なるだけで(前回の)オプティマ型と内部構造はすべて同じ。と思いきや、外観のインク窓の大きさが違うだけでなく、リングを取り付ける位置から内部の寸法等もすべて微妙に異なる別設計であることに気付きました。当然、オプティマ型修理当時に作成したパーツ図面も流用できず、またゼロから計測し直さなければなりません。蛇足ながら透明インクタンクの形が違うのであって、吸入機構のパーツや、ペン先ユニット等は同じです。

f:id:hikkigukobo:20211217231215j:plain

 

このメーカーの吸入式に共通の症状、インク窓の首軸との境目で真っ二つに破断してしまっています。

f:id:hikkigukobo:20211217231243j:plain

 

f:id:hikkigukobo:20211217231434j:plain

 

ペン先ユニットを取り外した状態。穴の脇に破断した透明アクリル材の残りが見えます。

f:id:hikkigukobo:20211217231818j:plain

 

首軸&胴軸内に残った、透明アクリル材をすべて削り終えました。ここで一旦作業を中断し、それぞれの内径や深さ、形状、ネジ位置・ピッチを計測し、それらを元に逆算するかたちでインクタンクの図面を起こします。

f:id:hikkigukobo:20211217231840j:plain

 

図面を元に作ったインクタンク。上が予備、下がオリジナルの色に合わせて染色した物になります。ボディから僅かに見えるインク窓を挟む格好で雄ネジが見えますね。オリジナルも、胴軸・首軸の双方をネジ+接着で固定されていました。更に上のネジの裏側には、ペン先ソケットを止める雌ネジも切ってあります。この1体のパーツに、3か所もネジが設けられているのです。

f:id:hikkigukobo:20211217232128j:plain

 

まずは胴軸側に接着で取り付けます。

f:id:hikkigukobo:20211217232511j:plain

 

最後に首軸側にも取り付けて完成しました。

f:id:hikkigukobo:20211217232554j:plain

 

接着が乾燥したら、水やインクを吸入してテストを行い、無事修理は終わりました。吸入量はオプティマと全く同じでした。前述のように、オプティマ型と同じ構造という先入観(勘違い)から思わぬ時間を要してしまいました。それでも、今回(も)作成した図面及び修理記録で、結果的にアウロラ修理対応の新たなレパートリーが増えて良かったです。それにしても同じメーカーでインクタンクの設計が若干違っても、壊れ方は全く同じなのですね。

f:id:hikkigukobo:20211217232638j:plain