セーラーの(旧)銘木シリーズの万年筆で、胴軸のエンドビスが紛失してしまっています。メーカー側のパーツ在庫終了とのことで、ご相談を受けました。胴軸ボトムの本来ある筈のエンド部がありません。
胴軸の底から: エンド部がないとポッカリと開いた穴がむき出しに・・・・・・。
これは単に見栄えの問題ではなく、インナー軸と胴軸を中で固定する重要なパーツなため、このままではペンとして使うことが出来ません。実は私もこの状態を目にしたことは過去にもありまして、実際インク交換で首軸を外す際に、ビスとナットが緩んでやはり同じように外れてしまいました。きっと同じ経験をされた(持ち主の)方も少なくないと思います。
ここは接着で済ませる訳にもゆかず、(パーツがない以上)同じパーツを作って対応するしかありません。同じモデルから取り外したエンドビスを見本に、製作作業に取り掛かります。写真左はオリジナル、右は真鍮材から削り出した、途中の物。ヘッドがまだ少し厚く、側面にテーパーを設けていません。
仕上げを残してほぼ出来上がりました。 ※左の1個だけがオリジナルの見本
一見なんてことのないビスに見えますが、難しいのはネジ脚元の窪み。木の胴軸ボトムの、一段出た端面が収まるスペースです。旋盤では難しくないのかも知れませんが、手に切削刃物を持って削る轆轤ではやや無茶な作業でした。
ナットも作りました。いえ、正確にはこれも作るしかありませんでした💦 このネジに合う六角ナットはホームセンターで手に入ったのですが、問題は外径! 若干太いため、インナー軸に入れると途中で閊えてしまい、外から差し込んだエンドビスのネジ脚まで届かないのです。では届くようにネジ脚をもう少し長く作れば? そうすると今度はコンバーターが奥まで入らなくなってしまいます。オリジナルのビス&ナットが付いた正常な状態でも、中のコンバーターとナットとの距離は僅か1mmしかありません。因みにこのナットのサイズはΦ5.0, h=1.7mm。
表面に金メッキを施して、ビスが出来上がりました(左の2個)。
作ったエンドビス、ナットで胴軸とインナー軸を再び固定でき、本来の外観になりました。もちろん、首軸にコンバーターを付けて収まることは確認済です。
パーツ製作見本用の同モデル(黒檀)と。