胴軸ねじ山の崩壊により、キャップが締められない状態の万年筆をお預かりしました。●デルタのレプブリケ・マリナーレ
2/3以上、ねじ山が剥がれ落ちているため、キャップのネジとは全く嚙み合いません。※太いOリングは、オリジナルにはなかった筈の物です。
剥がれたネジの数破片は、ご依頼時に同封されていた物。これはデルタ独特の手法の一つですが、ねじ部分は別に削って作り、上から被せる形で接着されていました。ドルチェヴィータを含め、キャップの縁なども同様の工法でこれもまたよく割れてしまいます。オリジナル素材の割れやすさに加えて、2体構造の弱点が露呈した格好と言えそうです。
寸法を測り、修理方法を決めて作業に入ります。まずはねじのあった凸部分をカットして、端面を整えます。そして雌ねじのある内部を8mmばかり彫り込み、これから作るパーツの接着しろを設ける訳です。
割れた部分の代替パーツを作りました。後から色付けするため、透明樹脂から削りました。表面にキャップ受けの3条ねじ、そして内側は首軸を着脱するための1条ねじを切りました。
首軸を仮装着(締め)。素材が透明なためかえって見辛いですが、表面の雄ネジより下は、ネジ無しの接着しろ。
先ほど加工した胴軸に取付け、収まり具合を確認します。
一旦取り外して、ボディ色に合わせた染色を行います。
胴軸に接着取付けして、修理完了。
ただ取り付けるのではなく、胴軸エンドにキャップを(こちらもねじ)締めて、クリップがペン先と一直線上の位置に来る所で接着・接合します。オリジナルと同じように、リング状にねじを作り、やはり同じ凸部表面に接着する方法もありましたが、強度面の将来的な不安から採用しませんでした。