直すついでのカスタマイズ② / Montblanc Meisterstück 134

胴軸がひび割れたアンティーク万年筆を、お客さんご自身が入手された材料を使ってボディを作るという、なかなか凝ったご依頼をいただきました。万年筆はモンブランNo.134 で、使う材料は戦前(外国製)のカラーエボナイト。同時にお預かりの材料も製造されたままの物で、センターレス加工すらされていない、デッドストック状態でした。写真右のような棒材をボディ径に近い細さまで削り出したら(左)、美しい模様が現れました。赤茶の斑模様が昔のウォーターマンを髣髴とさせます。恐らくベースのNo.134 より、この(新品)材料の方が古いのでは? 削る前は本当に何色だかよく分からない表面で、端面をまじまじと眺めて、ようやくオレンジの渦巻きであることが分かるぐらいでした。

 

完成したキャップ、胴軸にすべてのパーツを付け替えたら、全く違う姿で蘇りました。

 

インクビューは透明セルロースを削り出し、染色してあります。このやや茶色がかったグレーは(ベースの134の)オリジナルとは異なる色合いで、こちらも依頼者様のご希望でした。

 

こうして生まれ変わった万年筆ですが、使った材料も当時のカラーエボナイトセルロースと、いずれも現在ではほぼ使われない物です。不思議とこれ自体がアンティークの雰囲気を纏っていました。