大修理 / WATERMAN Watermina

ウォーターマンの”ウォータミナ”万年筆をお直ししました。それも直すべき箇所満載の、大修理とあいなりました。モデル:Watermina 44

概ね以下の症状です。

・キャップ内側のとば口が、一部欠損 → ネジがないため、閉められない

・キャップトップが破損、クリップがぐらぐらと浮いた状態

・胴軸(樹脂)が破断

・インクを吸入しない

 

前述の通りとば口を失っているため、メタルのアウターが一部透かし彫り状態になってしまっています。

 

トップの本来円筒型の端面が、半分近く欠けてしまっています。ここはクリップを固定する役目も兼ねているため、安定しない状態です。

 

キャップとば口側から。入口にネジが集中していたので、これでは開閉できません。

 

お預かり時の点検で、胴軸インナーも水平状の亀裂があることに気付き、慎重に少し引っ張ったら、このようにすっぽ抜けてしまいました。ここはお客さんも気付いていませんでした。接着、それで収まらない場合は代替品の製作になることをお伝えしました。

 

破損したキャップを分解し、修理方法を決めて作業に入ります。ネジを失っているのだから、どの道インナーとトップのすべてを作る以外ありません。それにしてもウォータミナのメタル装飾軸って、インナーを取り外すとこんな形が変わってしまう程へなへななんですね。

 

トップエンド(天ビス)と、内側から固定するパーツを作りました。ビスも錆びにくいステンレスを使います。ここは直にインクが付着するところなので。

 

キャップのインナーを製作・仮装着。むき出しの物は、取り外したオリジナル。


(2条)ネジが再現されていることがお分かりいただけると思います。

 

同じ要領で胴軸インナー全体を作りました。当初テーパーの尻軸(エンド部)はカットして再利用しようとしましたが、一体型で作る方がやりやすかったことと、材料を分けない方が強度的に有利であると判断し、前者を選びました。

 

最期の作業、CFコンバーターのサック交換です。オリジナルは黒いゴムで、これは経年による物で寿命です。

 

シリコン製のサックに付け替えました。CFのサック交換はレバー式やボタンフィラーとは勝手が全く異なり、とても難しいです。いえ、そもそもこのコンバーター自体、サック交換が出来るようには作られていません。この作業内容は以前にも採り上げましたので、再読いただければ何よりです。

hikkigukobo.hatenablog.com

写真は撮りませんでしたが、この万年筆は他にカートリッジ/コンバーター取付けの細管も破損していましたので、そこも加工・製作・取付けを行っています。

接着乾燥を含む、すべてのパーツを取り付けて修理完了。1本の万年筆、それも両用式でここまで手を加えなければならない修理は、うちでも稀かも知れません。それは技術的な話ばかりではなく、依頼者様のご判断(修理にかかる費用など)に拠るところ大です。申すまでもなく、その辺はお気持ちやご事情など様々ですから。更にこのウォータミナを含む、70年代のウォーターマンはあらゆるパーツが細身に設計されているので、修理難易度はかなり高いのが難です。