ペリカン M300の修理を2件、ご紹介します。何でも廃盤からまだ数年だというのに、既にメーカーでは部品在庫がなく、修理を断られたそうです。
まず1件目。「胴軸と首軸が外れてしまって、破損はしていないと思う」というご相談の万年筆。実際にお預かりして診て見ると、胴軸側の取付け口が破断してしまっていることが判明。分離した輪っかは、首軸内に残っていたのをこちらで削って取り外した物になります。この状態での接着補修では、とても実用の強度には耐えられないと判断し、別の方法を模索します。ご相談時から写真である程度の状態は把握していましたので、その時は胴軸をくり抜いて、インナーバレルを作ってしまう方法を検討していました。これは同じサイズのM320で行っており、過去ブログでご紹介済みです。
https://hikkigukobo.hatenablog.com/entry/2021/03/21/005536
今回は修理費をかなり抑える意味でも、別の修理方法を取りました。破断する前の取付け口と同じパーツを作り、胴軸と首軸を接着固定します。
オリジナルの取付け口を切断し、代替部品取り付けのために胴軸を少し彫り、接着した状態になります。
首軸側も接着して、ひとまず修理が終わりました。写真だとなかなイメージが掴みにくいとは思いますが、ペン芯の穴も兼ねた現物の取付け口は非常に側面が薄いです。あまり言いたくありませんが、これではいつ折損しても不思議ではありません。ともあれ、接着乾燥後インクを入れてみて、ねじ下から漏れなければ成功です。
次に2件目。首軸リングの製作依頼になります。これは過去M400やM800でもご紹介しましたが、M300でのご依頼は滅多にありません。首軸リングの腐食がかなり進んでしまって、1/3近くが欠損してしまっています。見た目だけではなく、キャップの閉まり具合も違和感を感じるとのことでした。
修理に入るため、リング残りの部分も完全に取り外します。
右が真鍮を削って作った代替パーツになりまして、金メッキ済みです。
取付け接着完了。