マンダリン・イエロー / PARKER DUOFOLD Centennial Mandarin Yellow

パーカーの限定品(1995年)、デュオフォールド センテニアル『マンダリン・イエロー』の修理を依頼されました。

 

機能上は問題ないのですが、キャップの縁が一部欠損してしまい、結構目立つ状態です。3重リングの一番上を境に、新規に縁全体を同じ色の材料で作り、継ぎ足す方法で直します。

 

継ぎ足す縁の製作シーン。手前がこれから切るネジの土台、3重リングのスペースになります。過去のデュオフォールドの修理経験から、キャップが天ビスを除くキャップチューブとデコリングを含む縁との二重構造であることを理解しているため、この方法を採りました。肝心の材料は、黄色のセルロース材を使います。実は弊所がパーカー マンダリン・イエローのために製造して貰った特注になります。

 

途中工程の写真をだいぶ省きましたが、完成した縁をオリジナルのキャップチューブに仮接合(最後に接着)した状態です。後は内径の調節のための掘り込み、胴軸と噛み合わせるネジ切り、そして縁のテーパ加工が待っています。因みにデコリングの間にセッティングされる黄色い細い隙間材もオリジナルを再利用しています。つまり、外観上は一番下のリングから下の”縁”のみ、新素材になります。

 

これは珍しい黄色いセルロース材のスクラップ(くず)の記念写真。所々に見える乾燥ワカメのような黒いくずはエボナイトで、これは作業台に残っていった物で無視してください💦

 

ネジ切りを含むすべての工程を終え、僅かな表面と端面を研磨仕上げして修理が完了しました。右の残骸が取り外したオリジナルの1ピース。チューブ側とはネジ+接着で固定する構造です。これはセンテニアル(メインサイズ)、インターナショナル(中型)とも同じ構造ですが、決して興味本位で取り外そうとしてはいけません! 申すまでもなく割ってしまうのがオチです。写真からもお分かりいただけるかと思いますが、縁(ふち)の成型は安全を考慮してオリジナルより少し太めにしてあります。

 

先ほどマンダリン・イエローのための特注素材と書きましたが、正確には同じマンダリン・イエローでも、1920年代のオリジナル(セルロイド)版のためでした。今回の1995年発売のマンダリン・イエローは、最初の復刻版ということになります。いずれにしましても、材料が役立って何よりでした。