三重構造の胴軸を持つ万年筆 セミラミス / Montblanc Semiramis

モンブラン パトロンシリーズのセミラミス(1996年発売)の万年筆をお直ししました。破損は2ヵ所。胴軸と首軸が破断、そしてキャップトップ(天冠)も破損。その天冠樹脂部分にいたっては、破片すら無い状態でした。ばらばらになってしまったため、メーカーでのパーツ交換を見越して廃棄してしまったとのこと。

 

真っ二つに折れた胴軸/首軸の破断面同士。

 

修理作業に入るため、吸入機構や胴軸の透かし彫りカバーを取り外しました。現れたのは金属と樹脂のインナー。つまり本体は透かし彫りの外筒、金属&樹脂の胴軸の3重構造! この複雑な構造と外側が重い金属ゆえ、当然落下や当たりなどの衝撃では(最も柔らかい)樹脂のインナー軸に一気に負荷がかかることになります。

 

首軸一体型のインナー軸を作ります。堅牢と耐久性を考慮し、使う材料はエボナイト

 

首軸一体型インナーの完成。下は破断したオリジナルで、金属軸から取り外した物になります。分離破損していたとはいえ、ここまで持って来れたから正確な寸法を採寸(図面作成)して、代替部品を作ることができた訳です。

 

先ほど拵えたインナーとオリジナルの金属筒を取付け、胴軸が完成。破損する前の(透かし彫り筒を外した)胴軸と同じ姿です。雄ねじから上がエボナイト、ネジから下が表面を塗装してマット仕上げされた金属になります。

 

次に失われた天冠の再生作業に入ります。今回は同じ見本や図面がない以上、寸法はキャップのサイズやオリジナルの写真を元に想像で作らざるを得ませんでした。ただ樹脂の天冠がないのは仕方ないとして、ねじとブッシュが残っていたのが幸いでした。

 

天冠が完成しました。ネジ受けのブッシュが、接着なしで抜けない程度の内径調整に手間取りました。脇の半円状のスペースは、キャップチューブ上部の突起受けで、これによりクリップの上に装着しても回りません。

 

作った天冠にねじ受け(ブッシュ)を埋め込みます。

 

クリップと透かし彫り装飾のカバー等を取り付け、最後に下からねじ留めしてすべてのパーツを固定して、キャップの修理も完了。残念ながらホワイトスターは無しです。

 

インク吸入の試験を終えて修理完了。これで普通にお使いいただけます。破損した樹脂はすべてエボナイトを削って再現したため、再び同程度の衝撃を受けてもポッキリ折れることはないでしょう。とはいえ、取り扱いにはくれぐれもご注意を!