首軸リング製作 / WATERMAN EXCLUSIVE

「万年筆のペン先根本辺りからインクが漏れ、手が汚れる」という修理のご依頼です。ウォーターマンのエクスクルーシヴというスリムなストレート軸です。

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首軸先端のメタル部分が腐食して金メッキが剥がれ、一部内部がむき出しになっていました。ここで嵌合式のキャップを受け、パチンと閉まる機能的にも重要な部分です。

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取り外して、パーツの寸法やネジのピッチを測ります。

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以前2回に渡ってご紹介しましたパーカー75と同じ要領で、真鍮で同じ形に製作して対処します。無垢の真鍮棒から削り出して同じ形に作ります。

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製作が終わりました。難しいのが、真ん中の溝です。途中キャップで何度も合わせを行いました。溝の位置や形、深さが合っていないと上手くキャップに収まりません。パチッと言う感じで閉まれば成功です。

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後は表面に金メッキを施して、修理完了となります。EXCLUSIVEは1980年代のシリーズで、年式の問題で流石にメーカーでは修理を受けられなかったため、持ち主様は今回のご依頼まで数年間使えずにいたそうです。

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モンブランのカートリッジ式 首軸修理 / Montblanc No 221

モンブランのカートリッジ式万年筆で、グリップ部分の内部が折れて使えないと言うご相談がありました。歴代モンブランで日本でもポピュラーな通称3ケタ(1970年代)シリーズの1つです。このシリーズで破損するのは、ほぼ首軸表面のひび割れか今回のコネクターパーツです。首軸側と(インクを交換する時に開ける)胴軸側を繋ぐ、大切な部品です。ここが折れれば握って書く事が出来ません。送られて来た時点で、真っ二つに破損したこのアクリルパーツは、上部が首軸内部に残ったままになっていました。

首軸フード内に残った方も取り出したところ。

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接着ではお直し出来ないため、同じ透明アクリル材から削り出して製作します。

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ネジを切ったところで、オリジナルのフードを付けてネジの締まり具合を確かめます。

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ネクターが完成しました。この小さなパーツにかなりの機能が集約されるので、見た目以上に製作は困難でした。首軸フード部と胴軸をネジできっちり繋げられるのはもちろん、カートリッジ&コンバーターを定位置でオリジナルと違和感ないように取り付けられ、且つインクが通るので漏れないようにもしなければなりません。

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首軸に取り付けて、インクを吸入してインク漏れしないかをチェックします。ところで見えているネジは、カートリッジ式にはとても珍しい4条ネジ(いわゆる早ネジ)。この小さなコネクターパーツに多条ネジを切るのも、やはり大変です。

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オリジナル程の透明感はありませんが、何とか丈夫に日常使用に耐えられるようにはなってくれたようです。機会があれば、同じ3ケタシリーズのフード部が破損した例(修理)をご紹介したいと思います。

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ヤリ製作・取付け / PILOT CUSTOM いぶし銀

 パイロットの40数年前の初代エリート系の万年筆で、コンバーターを取り付けるためのパーツが破損して使えなくなっていました。同社の万年筆は”ヤリ”と呼ばれる、半円状の樋のような物が付いたパーツで、カートリッジやコンバーターを取り付けられるようになっています。依頼主の方はメーカーに修理に出したところ、この型式のパーツ在庫が終了して受け付けられなかったそうです。

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お客さんは1970年代に新品で購入して以来ずっと愛用されてきたのですが、ヤリの欠損で止む無く付けペン状態で使われていたそうです。首軸を裏側から見ても、ヤリがないのでペン芯の底がむき出しで、宙ぶらりん状態です。

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オリジナルは透明アクリルですが、再び長くお使いいただけるよう強度を鑑み、エボナイトで製作しました。ネジ一体のヤリです。荒削りを終えたところで、ここから更にこまかいバリを研磨仕上げします。

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コンバーターに丁度良いフィット感で取り付けられることを確認出来たら、パーツ製作は完了。

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出来たヤリパーツを工具で、首軸内部にネジ回して取り付けます。コンバーターを再び装着し、修理完了です。

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インクビューのみの製作 / SOENNECKEN

アンティークの同じメーカーの万年筆の修理を2本まとめて依頼されました。割れたインク窓の修復(製作)と、吸入機構の修理(サック交換)です。ドイツのゾーネケンで、1935年頃の製品。2本とも同じ吸入方式です。即ち外観はペリカンのようなインクビューがありますが、ピストン式ではなくボタン吸入式という珍しい物です。ウォーターマンとほぼ同じですが、あちらはレバー式でした。

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2本ともインクビューに目立つクラックが数か所あり、接着では綺麗になりません。

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ご覧のようにインクビューは胴軸とネジで接合されており、この部分の製作で胴軸内部全体を作る必要はありません。ブルーセルロイド(イタリア製)の方がラインゴルト、手前のブラックセルロイド軸はプレジデントと言うシリーズです。 ※写っているラテックスのサックは元から付いていたもので、これらをシリコンサックに付け替えます。

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インク窓と胴軸を切り離したら、今度は首軸も取り外します。案の定、1本は取り外しの段階でさらに崩壊が進みました。外ネジが首軸側に持って行かれてしまいました。どの道、修理は外観以上に急を要していたという事になりますね。

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採寸・記録が済んだら、まずはインク窓の製作に取り掛かります。透明アクリルを使います。

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オリジナルの胴軸と、ネジがぴったり合い、且つつなぎ目からインクが滲出しないよう丁寧に削ります。これには、刃物をよく研いでいるか否かでインクの食い止めに掛かって来ます。

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製作の傷を取り、一応切削作業の方は終了。次に塗装に入ります。

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オリジナルかそれよりも幾らか明るい色で染色します。経年の汚れ、インクの汚れ等で(特定のメーカーに限らず)現状はやや色が濃くなっているのが普通です。従って新品当時の色を想像し、仕上げてゆきます。

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サックを交換取り付けし、インクビュー/胴軸の接着剤の乾燥を待ちます。後日吸入テストを行い、インクの滲出無く基準の量を吸入できてようやく完了となります。

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パーカータイプの回転メカをモンブランに応用できました! / Montblanc turbo

モンブランの1970-80年代のターボというシリーズのツイスト式ボールペンです。落としてしまった際に、キャップチューブと胴軸側が分離破損してしまったとのことです。一番下のグレー+メタルのパーツは、リフィルを繰り出す最も重要な部分です。これはお預かり後に引き抜いて取り出した状態です。

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本来の位置に装着して見て、外れてしまった上に回転機能が働かない理由が分かりました。カバー部の樹脂の割れが著しく、スカスカで全く接続出来なくなっていました。回転するのは先端のメタルのみで、割れたカバー部分は本来固定されて動かないのが正常です。ところがこの状態では、ストッパーにならず回転つまみと一緒に空回りしてしまいます。

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そこでパーカータイプの回転メカ(パーカー純正ではありません)を移殖して取り付ける事にします。モンブランとパーカーではリフィルの形もサイズも異なりますが、この種の構造のボールペンではある位置で伸縮の機能を果たしてくれれば良い訳で、ストロークもほぼ同じです。また上部の回転つまみも、キャップチューブ内の窪みにピッタリ収まる事を確認しました。問題は形の異なるこの他社製のメカを、ボールペン先端が決まった位置に出し入れできるように持って行けるかです。つまり、メカをその丁度良い位置にどうやって固定させるかという事になります。 ※写真は移殖する新品のパーツ

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寸法を測って、メカを固定させる位置を決めたら作業に入ります。まず、オリジナルのメタルパーツを留める胴軸上部を切り落とします。

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残った胴軸側のリフィル挿入口の内側にネジを切りました。

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次に回転メカと胴軸を繋ぐためのパーツを樹脂で製作します。

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先にネジを切った胴軸側に装着するためのネジを切ります。

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胴軸と製作した接続パーツを取り付けます。

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一旦リフィルがスムーズに入るかチェック。

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リフィルに蓋をするように、製作した接続パーツと新品の回転メカをネジで締めて固定します。

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この仮付け段階で回転つまみ(上の写真右側)を指で回して、写真のようにリフィルが適当な位置に出て留まる・収納出来ることを確認しました。

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キャップチューブを圧入して、完成です。下の3つのパーツは、すべて不要となった物です。

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格子溝の再塗装 / PARKER 75 Sterling Silver

パーカー75 スターリングシルバー(USA) の首軸リング製作修理と、退色した格子溝の塗装を依頼されました。首軸リングの製作は過去何度か採り上げましたので、今回ここでは省きます。リング破損の修理を機に、美しく蘇らせたいとのことでした。

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まずは再塗装前のボディの写真から。パッと見、状態はまずまずですが、所々塗装の剥げが見られます。

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塗装に入る前に、キャップ、胴軸ともすべてのパーツを取り外します。

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オリジナルに近い感じの塗料を全体に塗りました。溝じゃない方の表面も含めて、一気に全体に塗る方が、結果的に効率よく(ムラなく)塗りこめます。

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数十分の乾燥を待ち、表面全体の研磨に入ります。轆轤にセットして、ボディ本体を回転させながら研磨ペーパーで溝以外の塗料を落とします。ボディが踊らずに芯を出して回転できるよう、樹脂材をボディ内側の形状に合わせて削ります。

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荒削り、中間、仕上げの3段階の研磨を経て洗浄を行います。

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パーツをすべて元通りに取り付けて、修理を含めて完了です。新品当時(カタログ写真も)は、こんな感じだったのでしょうか?

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再塗装の前に製作・取付を行った真鍮製首軸リングが映えますね。

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特に刻印文字やブランドの矢羽マークのメリハリ感は、再塗装前とは雲泥の差です。さてこの類のリペイントを行う場合、溝と表面の最低限の高低差が残っていることが条件です。言うまでもなく、表面が著しく摩耗していれば、塗料が綺麗に乗らなくなるからです。

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 このシリーズは今でも人気があるのでご存知の方も多いですが、銀特有のくすみでしばらく使わないと表面全体が自然に黒くなります。銀磨きで研磨すれば綺麗に輝きを取り戻せますが、これを繰り返すと(経年の原因がほとんど)溝の黒い部分も退色させてしまうことがあります。今回のように、2つの作業を同時にご依頼いただければ、個別で依頼されるより幾らかお値引きも致します。

 

 

プラチナ70周年吸入再生 / Platinum 70th Anniversary Celluloid

1989年に発売されたプラチナ70周年記念の万年筆で、エメラルド・スパターと言うグリーンセルロイド版です。回転吸入式ですが、全くインクを吸い上げません。プラチナ本社でもパーツ保管が終了したため、現在受けられないそうです。

作業に入ります。回転つまみ(尻軸)がちゃんと作動するので、内部の吸入弁の摩耗か脱落は明らかでしょう。

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プラチナ70周年は素材やフォルム、サイズなど幾種かあり、かなりのバリエーションから選べるシリーズでした。しかし、吸入機構及び内部のパーツはほぼ共通でした。この万年筆のボディパーツや吸入機構の一部は接着中心で、まず知識や設備がないと分解できない構造となっております。ペン先・ペン芯を抜き、首軸から外します。ここも接着されており、回しても引っこ抜こうとしてもまず外れません。写真では省略しましたが、まず熱などで糊の固着を緩くした後本体を轆轤にセットします。そして、モーター回転の遠心力で首軸の枠を取り外しました。

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次にこれまたネジ+接着されたカバーを外します。

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するとピストンの弁となる、Oリングが真っ二つに切れた状態で出て来ました。本来これが胴軸シリンダー内をシーリングして上下することにより、吸入・排出できるのです。ところがこれでは全く吸入できません。

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新しいOリング(ホームセンター等では売られていない規格)を取り付け、パーツ及びシリンダー内を洗浄します。

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元通り組立て&簡易接着を行いました。吸入・排出の試験を経て、基準量のインク吸入を確認出来たら完了です。今回、パーツが破損していなかったから良かったですが、そうでなければこちらでもオリジナルでのお直しは出来ません。また、この万年筆は轆轤挽きで作られている(吸入機構を除く)ため、前述のように轆轤を使わないと修理出来ない構造です。

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