パーカー45の修理依頼で、首軸表面が割れインクで手が汚れるという症状です。パーカー45に共通して見られる、経年によるプラスティックの痩せが原因です。
ルーペで覗かなくても、縦に大きなクラックがあることが分かります。また痩せの進行が著しいので、本来の形より先端がかなり細く変形している上、ぐにゃぐにゃに波打った状態です。ここまでになると、傷口の接着ではまず直りません。またインク滲出とは別に、流石にこの形状では嵌合式のキャップが収まらないスカスカの状態。
結論、首軸のカバー部をオリジナル通りに製作するしか方法はありません。しかし形だけ同じに作っても、別の大きな問題があります。この万年筆は首軸の中にコレクターというパーツが埋め込まれています。コレクターとはペン芯を装着しカートリッジやコンバーターと繋ぐ、心臓部のようなパーツです。しかも、45のコレクターはインク溜まりの役目を持つ、無数のフィンが付いた部分と一体となっています。従ってカートリッジとの接続箇所まで作っても、フィンのあるコレクターがなければ、簡単にインクがペン先からボタ落ちしてしまい、本来の性能を発揮出来ません。その為、コレクターの流用は必須です。
↑ コレクターを取り出すには、首軸全体を削る必要があります。外側を削りつつ、なかのパーツには絶対傷をを付けないで進めなければなりません。少しでも刃物が当たれば、フィンはいとも簡単に吹き飛んでしまいます。 ↓ 無事取り出せました。
洗浄を終えたコレクターとペン先ユニット。この2点が首軸の中にすっぽり納まっていたのですね。
首軸を製作します。ペン先ユニットはもちろん、コレクターを収められるように、内部もピッタリに穴開け加工を施します。
胴軸接続側のネジを切り、その上にリングがピッタリ収まるスペースを設けます。
オリジナルの胴軸との、ネジの締り具合のチェック。軽い力で安定して開閉できればOK。
今度は反対にチャッキングし、首軸表面の削り、ネジ切りを行います。
ペン先をユニットを仮付け。
表面全体をテーパ状に削り、痩せる前のオリジナルと同じ形まで仕上げます。途中キャップを何度も被せて、締り具合を微調整。仕上げの研磨を計算に入れて、僅かにきつめにします。ペーパー研磨後に丁度良い締り具合になるために。
先ほどのコレクターを中に取り付け、完成しました。