モンブランNo.256 キャップ&首軸製作 / Montblanc 256

アンティーク・モンブランの首軸と胴軸を作りました。1950年代のNo.256という少しずんぐりしたモデルです。ボディひび割れの場合は可能な限り、割れた箇所を接着して修復するやり方が一般的ですが、今回依頼主様のご要望でパーツ製作での対応となりました。例えオリジナルより太くなっても、実用優先に生まれ変わらせて欲しいとのご注文でした。首軸とキャップのクラックはご入手された時からあったそうです。

まずは首軸から。これだけの大きさのクラックになると、インク漏れも相当なものだった筈です。

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首軸を製作する作業の前に、リングを取りはずして磨きました。製作した首軸を再び接着で装着してしまうと、リングをムラなく磨けないので良い機会でした。

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エボナイトの内部を、胴軸に合わせて削り、形がピッタリと合った状態。

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ペン先ユニットが収まるよう、反対側も内部切削を終え、表面を削るのみとなりました。

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ほぼオリジナルと同じ形に削るのは当たり前ですが、角を丸めた端面(とば口)の縁を少し厚めに削りました。元々オリジナルが薄過ぎてこの箇所が傷みやすいので、これを機に耐久性を上げた形になります。

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ペン先ユニットを装着し、位置を確認します。もちろん、研磨の前にキャップとの収まり具合も行っています。

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次にキャップの製作を行います。オリジナルの2個のデコリングを活かすため、適当な位置で切断。リングの上のプラスティックを削り、接着シロを拵えました。

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削って作ったキャップスリーブに仮装着。

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ホワイトスターの天ビスも仮装着(ネジ)。そしてオリジナルと同じ形に表面を削って行きます。

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残るは表面研磨。

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キャップが完成しました。

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接着の乾燥を待って、内部の吸入機構等のオーバーホールを行い、修理はすべて完了しました。

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現存するモンブランNo.256はキャップ表面にクラックがある個体が多く、今回の万年筆も3か所もひび割れていました。256のキャップのクラックに悩まされている方は少なくないと思います。結構接着で直るケースもありますので、決してキャップ製作を(優先的に)お勧めしている訳ではありません。接着修理の方も、遠慮なくご相談ください。まずはお預かりして診てから、修理方法を判断致します。