2本のアンティークモンブラン、#744 & #744Nをお直ししました。①744Nは吸入のお直し、②744は当初のご依頼は吸入の修理と首軸の製作でした。お預かり時、胴軸は首軸よりもさらに痩せて、外径も見た目で細くなってしまっているのが分かる程でした。
当初から首軸の製作を希望されたのは、先端がほぼ一周に渡って大きく傷が付いてしまっていたから。因みにペン先は珍しいO3B。
修理に取り掛かるためボディ全体を分解したところ、懸念していた予想が的中して胴軸の先端部分、リングの真下から縦に大きくクラックが発生してしまいました。お客さんにご連絡して、胴軸も製作することになりました。
セルロイドの首軸がかなり痩せていたため、内径も狭くなっていたこともあり、ニブホルダーの取り出しにかなり時間が掛かってしまいました。結果ニブホルダーの先端も大きく傷が付いてしまいました。これらも取り掛かる前からの予想通りでした。状態によっては外れないケースもあるからです。
エボナイトを削って首軸の製作を行います。側面のアール付けはこれから。
側面(グリップ)の削り落とし。取り外したオリジナルを測りながら削りますが、収縮してしまっている現状から、新品時の外径を予想して少し太めに作ります。
首軸とホルダーの削りが完了。当然、首軸内部にもホルダー受けのネジを切ってあります。注意点は、そのネジを切る位置。完成して取り付ける際に、ホルダー先端がオリジナルと同じ深さで止まるようにしなければならないからです。
胴軸製作の写真は省略しました。アクリルを削って、外観は完成。仮付けの首軸も、もちろん新たに製作した方になります。
金張りの胴軸(外筒)も仮付けして、収まり具合を確認。
パッキン及び上下のナットを製作して仮取付け。そして水をインクに見立てて、吸入の確認。この時点でまだ空気が多めに入ってしまうので、微調整を繰り返します。
胴軸を研磨・染色して完成しました。オリジナルはダークブラウンの透明でしたが、お客さんのご希望でアンバー系にしました。元々メタルのボディやペン先その他のパーツ類の状態が良好だったこともあり、とても実用的なお直しが出来ました。アンティークペンの場合、オリジナルコンディションか実用かは依頼される方によって異なります。今回は実用優先でのご依頼でした。それにしても弊所でも首軸と胴軸の両方を作る機会って、滅多にありません。