回転式2色ボールペンをお直ししました。モンブランの80年代のS(スリム)ラインシリーズです。右に回せば青、左が赤、中間のニュートラル部分で芯が引っ込む構造で、多機能ペンの元祖的な物のようです。当然色の組み合わせは自由ですが・・・。
故障の内容は、落っことしたら片側の芯が固定されなくなってしまったというものでした。
リフィルのホルダーパイプの先にある、小さな赤いプラスティックのパーツがあります。これが白いカバー先端の溝に引っ掛かって、出した芯を固定する重要な役割を持っています。下の写真は破損していない方のストッパーで、ニュートラル(芯が胴軸内に収まった)状態。
問題の破損したストッパー。カバーに引っ掛かる突起部分だけが、分離してしまっていました。幾ら回転させても、芯が固定されない訳です。収納の際に勢いよく引っ込むのは、もちろんスプリングの反発力によるものです。この小さなパーツにただでさえ長年の負荷が掛かっている中、落下の衝撃が加わればこのような壊れ方をするのも頷けます。
一旦応急的に接着はしてみたものの、やはりまたすぐ外れてしまいました。同じパーツ単体の入手が難しいため、エボナイトを削ってストッパーを作ります。予備も含めて2個。細い方の直径は僅かΦ2.3mm、長さにしても5mmぐらいです。この小さい穴に、ホルダーパイプの先端を装着させますが、これも単に入れば良いというものではありません。多少の力では引っこ抜けないように、少々ぴっちりめの内径で空けます。因みに轆轤で削れるのも、ここまで。
オリジナル通り、突起部分だけを残して周りを削ります。両刀グラインダー、ハンドグラインダーの順に使い、残りは2、3種類の棒やすりで手仕上げになります。
ちょっと写真では上手く表現できなかったのが残念です。見てくれは綺麗じゃありませんが、きっちり機能してくれればOK。その機能とは、縦溝の入った樹脂の筒に収まり、且つ抵抗なく上下にスライドし、そして前述のカバーの溝でしっかり止まる(=固定)ように出来る事です。更に芯が出た際、破損していない側のリフィルと同じ位置で止まらなければなりません。例えば赤い芯の先端に対し、青の芯が出過ぎる、又は少し奥に引っ込んでいるというのでは機能も見た目も失格だからです。見辛いと思いますが、下の写真は突起が正面を向いた状態です。
最初作った方は失敗し、2個目で上手くいきました。こちらはオリジナルのストッパー側。
制作したストッパーで固定された状態。
多少緩かった胴軸の内径調節も同時に行い、修理が完了しました。