コルクスタッドの再生 / Montblanc telescopic piston

モンブランのテレスコープ吸入式の修理と言えば、まず第一に摩耗したコルクの交換。その一方でコルクを取り付け、固定させるためのスタッドやナットがダメになってしまっている例も少なくありません。コルクスタッドとは、(コルク)シールを取り付けるための土台にあたる部分で、シールの蓋=ナットを固定するための雄ネジが設けられています。過去2件の修理例をご紹介します。

例1) スタッドのネジが付いた突起の外形がかなり痩せてしまっています。そのため、シールの上でネジ留めされるナットが下の写真のように下まで緩く回って固定されません。つまり取付けてもナットごとコルクと一緒に外れてしまいます。

 

この場合、ナットを内径をやや狭く作って対応することもありますが、これはスタッドの収縮が著しく、ナット製作では納まらないレベルです。そこで最終手段として、スタッド本体をエボナイトで作って交換してしまうことにしました。上がテレスコープユニットから取り外した元のシールスタッド、下は今回製作した代替パーツです。見た目の違いは分からないと思いますが、ねじ外径を0.3mmほど太く作ってあります。この外径は新品当時のサイズと言うことになります。

 

同様にナットも新たに作ります(左下)。オリジナルのナット(右上)はさほど破損も収縮もしていませんが、外径不足でこれから取り付けるOリングのシールを抑えることができないから。高さを低く(薄く)、Oリングが外れないよう外径をやや広く作りました。

 

エボナイトで新たに作って取り付けたシールスタッドとナット。後はマウントとOリングを取り付けて完成です。

 

例2) こちらはナットとコルクがついたままスタッド先端が折れて、分断してしまっています。

 

これは完全な破損になりますので、パーツ交換しか手段はありません。そのパーツを、やはり例1と同様に作ります。

 

ユニット内部に残った、シールスタッドの”脚”を取り外したところ。

 

シールスタッドをエボナイトで製作。

 

ナットを取り付けて、調節しながらねじを切ります。

 

シールスタッドの完成。

 

ユニット内に収める”脚”側から。

 

ピストンユニットへ取付け。

 

左から作ったOリングのマウント、ナット、そしてオリジナルのナットになります。

 

完成。このような形で胴軸に収まる訳ですが、一旦ナットとシールマウント、Oリングを取外します。その後、胴軸に取り付けてから外した3つのパーツを胴軸を被せた上で、再度反対(首軸)側から取り付ければ作業完了。

ナット、コルクスタッド。これらコルクを設置・固定する2つのパーツは、いずれもオリジナルはセルロイドで作られています。セルロイドは経年で収縮しやすいのに加え、湿気で収縮が更に加速されます。通常インクを貯蔵する胴軸内にあり、常に(インクという)水分に浸かっている訳ですから、結果的に収縮による不具合や破損は避けれません。エボナイトでパーツを作ることにより、オリジナルより安定した物にできます。