アンティーク繰出し式ペンシルの修理依頼がありました。エバーシャープ(アメリカ)製1920年代の14金張りで、ボディはとても良い状態です。”回しても芯が出ない”とのこおtでしたが、お預かりして点検すると、繰出し機構自体は機能していました。ところが何か変。

芯を挿し込む側が異様に広く不安定に感じたら、本体の一部であるはずの口金がありませんでした。つまり依頼者様は口金を紛失した状態のペンシルを入手されたことになります。口金がないと、芯を装着させて書くことができません。


これがない以上は部品の入手か、こちらで作るしかありません。作るといっても、手掛けたことのないモデルとなりますと、本体側の構造を見ながら且つ機能するよう半ば想像でかたちに起こすしかないのが実情です。この時代の繰出し式ペンシルの口金は、見た目はどのメーカーも大体似たような物でその点はさほど問題ではありません。問題は本体と取り付けるねじが内か外か? 内外径は? ねじピッチは? 等の諸々が皆異なる点です。ともあれ、胴軸側を精査して製作可能かを実際に樹脂を削ってシュミレーションを行いました。
漸く口金の構造がある程度把握できたら、真鍮でパーツ作りの作業に掛かります。今回、ピッチ0.35ミリで内径までぴったりのダイスが工房にあったのが幸いでした。下の写真は胴軸側に収まるねじを切り終えたところ。

胴軸を噛み合わせて、ぴったり合うことを確認。次に先端形状の削りに掛かります。

胴軸に取り付けた状態での削りは、本体を傷付けてしまうので、”持たせる”治具をエボナイトで作ってから削りに入ります。形はほぼ整いました。

胴軸に取り付けて、見た目が自然な感じに合うまで削り・付け外しを繰り返します。形が仕上がったら、研磨スポンジとバフ掛けで仕上げます。

1.18mm芯を装着して安定して繰出し・収納できることを確認し、口金が完成しました。

オリジナルの口金は銀色だったため、それに合わせて鍍金します。口金が銀色なのは、この当時ウォーターマンでもパーカーでもあらゆるメーカーのセオリー通りですが・・・・・・。 ※さらに昔のモデルは独立した口金のない、胴軸が一体構造の物もありました。

これにて修理完了。実物とネットやカタログ写真等の資料で見て想像して作る要素がほとんどですが、実際に形に起こせても芯穴の内径調整も気の使う作業でした。芯のとおりがきつきつにならず、反対に緩すぎ(てしまうと筆記が不安定になってしまいます)にならないよう、微調整が必須でした。これはボールペンの口金作りより、微調整に時間を要します。
