ピストン式の回転ノブ、正確には回転ノブのインナー側が亀裂破損してしまった万年筆の修理を依頼されました。ペリカン No.520NN(1950年代)で、ベースの400NNのボディ全体に金張りされた仕様になります。写真のように胴軸/キャップだけでなく、回転ノブも樹脂インナーと金張りカバーの二重構造で、カバーが外れてしまう上に樹脂が割れていました。この状態ではノブを回しても、カバーとインナーが空回りしてしまうため、ピストンが作動せずインクの吸入・排出を行えません。

修理に取り掛かる前の点検で、インナーはさらに崩壊が進んでしまい、もはや接着でのお直しは不可と判断。本体をはじめ、他のパーツは特に破損や不具合が見られないので、破損部分の代替部品を作ればお直しできそうです。

使う材料はいつものエボナイト。丈夫で耐久性があるのが、これを使う一番の理由です。

オリジナルと同じ内寸に加工、内ねじを切り、さらに後ほど取り付ける螺旋ロッドと連結する穴を設け、内部が出来上がりました。写真はオリジナルのジョイント(左)と、ねじで噛み合わせた状態。左端面側の穴からピストンロッドが収まります。作った右側をこれより丸く削ります。

金張りのカバーがぴったりと収まるように、外側を削っていきます。

まだ完全には収まっていませんね。このように被せて削って、また被せて削ってを繰り返します。

カバーがぴったり収まり、インナーが完成しました。接着ではなく圧入するやり方です。治具を使ってインナー側を強く引っ張っても簡単には抜けないところまでテストします。

螺旋ロッドを圧入で取り付けました。ここで重要なのが、その加重がオリジナルとほぼ同じレベルまで持って行くこと。平たくいえば、機能上簡単に抜けないようにすることですね。

ピストンロッドを取付け、本来のユニットの姿になりました。

胴軸に取り付けて、吸入・排出のテストを済ませて修理が完了しました。単に機能面の回復だけではなく、動作に違和感を感じさせないことを特に気を付けています。ねじの切り方が正確でなかったり、内部の削りが狂うと、スムーズさに欠けてしまいます。
さて今回の亀裂破損ですが、デザイン上の元となる400NNが樹脂一体であるのに対し、520NNは前述のように樹脂と金属カバーの二重構造。ということは内径も外径も400NNと同じである以上、インナーの樹脂はかなり薄くせざるを得ないので、強度は落ちてしまう訳です。外からの衝撃はカバーで守られていても、経年の収縮劣化にはやはり不利です。それが結果的にエボナイト製に変わって、強度も上げることができました。

