メーカーにペリカンM800・赤縞の代替パーツがもうないとのことで、修理を2本まとめて依頼されました。首軸と胴軸の境目辺りからインク漏れで手が汚れる、という1本。そしてもう1本もほぼ同じ症状ですが、ねじの所から水平クラックが2ヵ所ほど見えてしまっている状態でした。
ペリカンのこのシリーズでは経験上、外側から補修しても漏れが止まらないか、止まってもいずれまた漏れを引き起こしてしまうことが分かっています。原因は内部のアクリル製インク貯蔵部がひび割れて、本体表面に回ってしまっているからです。一体成型で作られていますが、丁度ねじの裏側の首軸との接合部が最も弱く、ここからやられる個体がほとんど。
なお依頼者様からは2本とも首軸ごと作って欲しいと頼まれています。首軸・内部のインク貯蔵部を2つ作り、最後に接着してする方法の修理とします。
胴軸を傷つけないよう、首軸を切断します。
こちらは1本目。内側の透明アクリルが、インク貯蔵部となります。余談ですが首軸リングが金メッキじゃないのは、以前うちで腐食したリングの代わりに樹脂リングを作って代替としたからです。それも今回の修理で結局は首軸ごと作り直すことになります。
2本目。これは切断したのではなく、クラック位置を把握するために敢えて内部の傷口を広げるように首軸を取り外そうとした結果、このような形で折れて外れました。
慎重に胴軸内部の透明アクリル部分を、2/3ぐらいの深さまで掘り、オリジナルのインク貯蔵部を切削して除去します。
インク貯蔵部を割れにくい透明樹脂、首軸をエボナイトで作ります。胴軸内部の破損が異なっていたため、彫り込んだ内径も数値が少し違います。結果、インク貯蔵部の外形も同じではありません。
内面を良く研磨した後、水を入れ、吸入器を仮装着して水で吸入・排出の試験を行います。この内壁の磨き込みが難しいのです。
インク貯蔵部を胴軸に装着。オリジナルの破損前のアクリルも、このような形で首軸と繋がっていました。
ペン先ユニットが正しい位置・深さに止まって収まるかをチェック。
接着が乾燥したら修理は完了となります。