前期型と後期型をまとめて / Pelikan 101N Light-tortoise, 100N Marbled green CN

ペリカン100Nシリーズのボディ製作修理をご紹介します。構造がやや異なる新旧2本を、比較する形で採り上げてみました。

こちらは前期型にあたる101N ライトトータス・ブラウン軸。

 

インクと経年の汚れで、インク窓に大きなクラックが数か所あります。インクが漏れるだけでなく、いつ崩壊してもおかしくないやや危険な状態です。首軸、胴軸、ライトトータス柄のスリーヴの3ピース構造です。首軸がエボナイト、胴軸とスリーヴは柄は全く違うものの、どちらも同じセルロイド

 

吸入ユニットを、更にスリーヴを慎重に取り外したところ、胴軸のエンド部がこのような状態に。スリーヴ内に一部が分離して残ってしまいました。吸入直し等の修理工程でこのようなことになれば大ごとですが、今回は最初から胴軸製作でのご依頼ですので、これは全く問題ありません。

 

セルロース材を切削して、代替の胴軸が完成。インクビュー内面を磨いて、現れた本来の色を参考に、染色を行いました。作った方はブラウンに見えますが、グリーンがかったブラウンで、2重の染色を行っています。オリジナルの胴軸(左側)が更に崩壊してしまっているのは、首軸を取り外した際の結果。

 

ピストンシールを交換した吸入ユニットを取り付けて、この万年筆の修理は終わりました。


次は100N、それも最終モデルのCNです。先ほどのライトトータスとは形はほぼ同じに見えますが、素材・製法等まったく異なるモデルです。

 

インクビュー表面にかなり大きく目立つクラックが1本。とはいえ、これでもインク漏れがなく普通に使えますが、最初から胴軸製作でのご依頼でした。

 

胴軸製作にあたり、ペン先&吸入ユニット、スリーヴのすべてのパーツを取り外します。ここからが前回との一番の違いです。見た目は101N のように首軸を取り外すものと思われそうですが、さにあらず。同じ100Nでも中~後期型はアクリル製で、首軸/胴軸は一体成型で作られています。従って首軸も、内部がネジで繋がっている訳ではなく、首軸の再利用は不可能ということになります。そのため、これから胴軸だけではなく、首軸も別に作らなくてはなりません。

 

セルロース材で胴軸を製作。これはまだ荒削りです。

 

内外面を研磨・洗浄して、スリーヴを仮取付け。

 

これもオリジナルとは変わってしまいますが、首軸は黒のセルロースではなくエボナイトで作りました。胴軸全体をオリジナルカラーに合わせた色で染色。それが終わったら、更に雄ネジ表面を黒く染色します。

 

ピストンシールを交換・取付けて修理は完了しました。まとめますと、今回はオリジナルがアクリル製であるのに対し、首軸をエボナイト、そして胴軸をセルロイドという具合に材料だけは前モデルに戻るかたちになりました。これは偶然といいますか、あくまで破損しにくい実用を考えての結果です。・・・・・・なんだかややこしい説明で混乱させてしまったかも知れません。ともあれ、同じ100Nでも前期型と後期型では材料も製法もまったく異なるため、当然代替パーツの対応も異なります。