パーツ破損&紛失 / PARKER 65

歴代パーカーの中ではややマイナーな部類に入るモデル、パーカー65をお直ししました。時代的にパーカー61にほぼ被るシリーズで、ペン先の形状以外、サイズや共通パーツもあって兄弟のような位置付けだったようです。そんなモデルだけあって、当工房でも修理で依頼されるのは年に1,2本あるかないかです。当時のイギリスパーカーは主に欧州市場向けで、65やVPは日本にあまり入って来なかったようです。

依頼された万年筆は65の中~後期型。主な違いは初~前期方は専用吸入器仕様で、カートリッジは使えません。この仕様変遷も61と同じ。

ご依頼の内容:①首軸と胴軸のねじの閉まりがとてもが緩く、閉まり切らずに胴軸が抜けてしまう。 ②カートリッジがしっかり刺さらず、インクがまともに回ってこない。お預かり点検して、コネクターが経年収縮で痩せてしまっていることを確認。コネクターを作って、対応します。

 

ネクターを首軸から外そうとすると、割と弱い力で外せました。コネクターの上ねじも同様に痩せているため、ぴったり閉めると止まらずに空回りしてしまいました。どの道、このコネクターは使えません。

 

さらに酷いことに、取り外した時点で上側のねじを残して下側と分離してしまいました。上は工房にある同じパーツで、本来はこのような形・寸法です。こちらも壊れていて、あくまで形見本に利用しています。

 

次に開けた首軸の中を調べると、何と穿刺チューブがない! これではコンバーターの固定はおろか、カートリッジの蓋を完全に突き破ることはできません。今まで、ペン芯の先で穴の一部を開けるに留まっていたようです。中古品と聞いてますので、どうやら前の持ち主の手で分解・外されていたようです。ない物は仕方ないので、これも作るしかありません。幸いオリジナルの穿刺チューブが1個ありましたので、これを見本に、真鍮で作ります(左下)。

 

出来上がった穿刺チューブをコレクターに仮装着して、コンバーターと接続。これでカートリッジ&コンバーター両用式として、本来の使い方が可能になりました。

 

同時進行でコネクターを製作(上)。再び痩せて同じことが起こらないよう、ほぼ収縮しないエボナイトを使いました。

 

作った物を含む、すべてのパーツを取り付けて再組立て。無事に修理が完了しました。それにしてもネットオークション等から古いペンを入手する場合、今回のような当り外れは避けては通れませんね。目が肥えている人なら写真でかなり絞った判断ができるのでしょうが、中身までは・・・・・・。