繰り出し式ペンシル修理② / PARKER DUOFOLD Centennial

ノブを回転させても芯が出ない状態のペンシルをお直ししました。パーカー・デュオフォールド(復刻)の発売初期にあった0.9mm回転繰り出し式です。お預かり・点検して、芯の出し入れができない原因はすぐ分かりました。

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内部螺旋チューブユニットと回転ノブを繋ぐカバーチューブ=ファンネルの先端が大きくひび割れていました。ここにクラックが生じたことにより、螺旋チューブユニットを固定できずに空回りしてしまいます。螺旋が動か(回転)なければ、芯を装着したリードキャリアーも当然動きません。パーカーに限らず、繰り出し式ペンシル内のチューブ先端は、その薄い金属軸ゆえひび割れを起こして固定できなくなってしまうことがあります。ここは接着剤ではまず止まりません。他、工具でかしめたり、ロウ付け溶接などの方法もありますが、どちらも安定して固定させるには難しいです。※モデルによってはそれで直る場合もあります。ただし今回のペンシルはかしめでは効果がありませんでした。さらに応急処置的な手段として、布テープで止めてしまう方法もあります。ともあれ、今回は代替パーツを作って本体に取り付ける、確実な方法をご紹介します。

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内部の螺旋パイプを一旦取り外します。プロペリングロッド自体は機能(回転で上下に移動)していることを確認しました。

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ここから加工の作業に入ります。まずクラックのあるチューブ先端部を切断します。

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次に代替部分の製作。真鍮丸棒をくり抜き、切削。螺旋チューブが収まる内径に加工します。

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代替部ができ上ったら、チューブ本体に接着で取り付けます。

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螺旋チューブを含むメカ本体に圧入で取り付けます。この時点でチューブを回して、芯繰り出し・収納が行えることを確認します。大切なことは、後ろから引っ張ても容易には抜けない加減で穴の内面を加工すること。少しでも緩いと(芯補充や消しゴム使用に)頭部の回転つまみを引き抜く際、チューブ自体も一緒に抜けてしまいます。

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ボディ、回転ノブを取り付けて修理は完了しました。

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