ペン先の”癖取り”について

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当ホームページのメニューでもご案内の通り、万年筆のペン先”癖取り”について、ご説明致します。平たく言えば、癖取り=書き癖を取り除いてニュートラルな状態に戻す事。その癖取りの度合いにもよりますが、新品でお店に売られている(に近い)状態+αを基本に考えています。つまりまだ使われていない、メーカー出荷の検品&調整から上がった状態です。お店で新品の万年筆を試し書きしてから買われた方なら、お分かりと思います。許容範囲内の角度&筆圧で、特に引っ掛かりを感じることなく、スラスラ書けますね。後はインク出やペンを握る位置・角度、バランス、デザイン、総じてアタリ・ハズレ等々で選んで行く事になると思います。

一方アンティークを含む中古品を入手して使うとなると、それこそペンの状態は1本1本すべて違う訳です。ペン先に至ってはより過去の持ち主の書き癖が現れます。

今回の癖取りのご依頼品は、1950年代の所謂アンティーク万年筆。直接工房に持ち込まれ、対面での研磨・調整でした。従って直にご本人様からお話を伺い、ペンの持ち方を見ながら対応出来る訳です。「悪くはないけど、自分の持つ位置ではどうも滑りが良くないんです。そのせいか、万年筆は気に入っているのに入手してから何年も使っていません」 実際にお客さんの言われる角度で書かせて貰い、すぐ分かりました。

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ご覧のように、ペンポイントが左右ほぼ均等に、ある角度で摩耗し”面”に近い状態でした。かなり寝かせて書くと、見た目以上に太い字がスラスラと書けます。前の持ち主がどのような使い方をされたかを書くのは、今回のここでの目的じゃないので省きます。いずれにせよ、かなり癖の付いた例です。

 

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ペン先研磨機でペンポイントを少し削って、癖取りを行います。写真は中工程です。最初の粗削りと仕上げ研磨もあります。

 

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1回目の仕上げが終わったところです。少々角張った面が、やや小さく丸くなりました。後はインクを付けてお客さんに試し書きして貰い、ご希望を聞きながら微調整を繰り返します。OKが出たところで、癖取りの作業は終わり。

後日お客さんから頂いたコメントがあります。

「前の方の癖に合わせて書いていましたが、くせとりをしていただいたあと
あー、無理していたんだな、と感じました。
まるで体の不調が治った後で、あんなに痛かったんだなあ、というような感じです。

これからは自分の角度、くせを徐々につけていくのが楽しみです」

喜んで頂けて良かったです。なお冒頭で”お店に売られている状態+α”と書いたのは、癖取り研磨後の、お客さんに合わせた微調整を意味します。もちろん発送でのご依頼も承ります。対面での調整と比較すればどうしてもこちらに制約はありますが、+αの前の基本は同じです。

さて癖取りが可能な条件としましては、研磨して形を整えられるだけの最低限のペンポイントが残っている事。それもこちらで判断致します。

参考価格

今回の調整料は¥2,500(税抜き)でした。

ティールペン先は¥1,500~です。 ※難易度や必要時間により前後します。