古いプラチナのレバーフィラーの”レバー外れ”をお直しします。茶色いセルロイド製で戦後間もなくのモデルのようです。
中押し式、カートリッジ式普及前まで日本の万年筆のほとんどはレバーフィラー、通称”てこ式”でした。ゴムサックがあるサイクルで駄目になるのはともかく、レバーの故障は修理が難しくて厄介です。レバーフィラーはシェーファーの特許で、方式そのものは基本的に同じです。問題はレバーの設計や取り付け方法が、国やメーカーによってまちまちで、各パーツも汎用性がほとんどありません。真ん中の穴にピンを通して、胴軸と固定させ、文字通りてこのように起こしてプレッシャー・バーを作動させます。その留め具は、世界のメーカーのほとんどは小さなピンです。そのピンも取外しが可能な物から、胴軸ごと貫通させて出入り口を塞いでしまうタイプなど様々です。並木製作所時代のパイロットは前者になります。さらに今回のプラチナのようにレバー単体の物もあれば、固定枠や支柱を胴軸に嵌めこむタイプなど様々です。 ↓ 穴を通して留めるパーツが欠損して、レバーが固定されていません。
前置きが長くなりました。内部のパーツを一旦すべて取り外します。真ん中のスプリングは、これからカットしてパーツとして使います。この万年筆は日本独自の規格である、リング固定式です。胴軸内部に、リングの溝がある事を確認済みです。
説明が難しいので、今回の記事のためにカットモデルを作りました(アホみたいですね)。こんな感じに、内部の一周した窪みにリングが入る訳です。
まず先ほどのスプリングを適当な長さにカットして、レバーの穴に通します。大切なのは、スプリング外径を胴軸内径より少し大きめにすること。
後はレバーを胴軸内側から慎重に入れ、パチッという感触があれば取付け成功。次にサックをプレスするJバーを、レバーの”脚”に噛み合うように慎重に押し込みます。レールの左右脇に、2本の脚が入る仕組みです。もちろん、パーカーであろうとコンウェイステュアートであろうと同じです。
レバーの動きを確認。ちゃんと抵抗感あります。以上でメインのレバー取付け作業は終了です。この後、新品のサックを取り付ければインクを吸入できます。
次にキャップトップの修理を行います。元からあった(筈の)、傘形の天ビスが欠損しています。
ご覧のような、傘ビス(在庫から)を取り付けます。サイズ、色各種ございます。
取付けて、これにて修理はすべて終わりました。この小さいキャップトップは昔から多くのブランドで採用されていましたが、今はほとんど見る事がなくなりましたね。近年ではパーカー51、61、VPなどがこれに当たります。個人的には廃れた原因の1つは、クリップが緩んで回ってしまいやすいからだと思います。さてレバー式のレバー部分の破損は、症状やモデルによっては修理不可の可能性が高い事も覚えておいてください。レバーが折れていると、別メーカー品では流用できないケースが多いからです。蚤の市なんかでレバーフィラーを入手される時の参考になれば幸いです。その点、ボタンフィラーだとオリジナルパーツでなくとも、結構再利用できちゃます。