胴軸の大部分を紛失した状態のボールペン。これを作れますか?というご依頼でした。
ウォーターマンの1980年代の細身のシリーズで、スーパーマスター。回転式です。
内筒がすっぽり抜けた状態でした。接着が溶けたのか、このような状態で来る依頼品はとても珍しいです。最初、残った方の内軸を流用して、胴軸を作って接着する方法で進めようとしました。ところがこの内軸を覆う胴軸を作るには、スリムなキャップに一部が収まるようにするにはあまりに肉薄となってしまうことが判り、この方法は断念しました。そこで、内軸の機能も備えた一体物の胴軸全体を作ることにしました。
エボナイトを削り、胴軸が完成しました。作った胴軸の中には、リフィル受けのスプリングが入っています。見た目はシンプルですが、難しいのは中身の彫り。リフィルの収納&(筆記可能な)繰り出し状態から本来の寸法決めるのはもちろん、仮付けしたキャップを回して機能しなければなりません。途中までしか回転せず、、芯が何かに閊えるような状態でなかなか最後まで出なかったり・・・と。
回転で問題なくスムーズな芯の繰り出し・収納が行えることを確認したら、後は外形の削りです。
オリジナル状態の実物見本がなかったので、ウォーターマンの1980年代のカタログ写真を見て、想像でこの形までもっていきました。
修理方法にも色々ありますが、形や寸法等を想像しながらオリジナルに近付けて行く修理も少なくありません。