万年筆製作日誌① 国産現行カートリッジ式のボディ作り

筆記具工房では修理だけではなく、一部業者様向けに試作を含めた製作も行っております。今回ご紹介するのは、個人のお客さんからの依頼で作りました、万年筆のキャップと胴軸です。国産メーカーの中型サイズ万年筆をベースに、少し太い軸をエボナイトで製作して欲しい、というものでした。他クリップ無しで、キャップ・胴軸ともオリジナルと同じ長さで。

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今回の写真はブログ用ではなく、お客さんに途中経過を見て頂くために撮ったものです。上と下の2枚は不格好なストッパー(転がり防止)が付いていますが、これはクリップ無しに対応するこちらの一つの提案でした。最終的にはストッパーも無しで選ばれました。

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今回の製作依頼の目玉は、コンバーター用のブラインドキャップを設ける事。「胴軸の後ろを外して、ボタンフィラーのようにコンバーター操作で吸入する軸は可能でしょうか?」と相談されました。ブラインドキャップを設けるのは、過去インク止め式やボタンフィラーの製作でさんざんやって来たので慣れてはいます。気を付けた事と言えば、コンバーターの脇のスペースを可能な限り狭くした点です。

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吸入する時、コンバーターが左右にグラつかないようにするため。でもあまりきつめにするとコンバーターを取り換える時、外しにくく傷も付けてしまうのでそこは適当に。

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胴軸を磨いて完成しました。ご注文はストッパーも無しのシンプルな仕様です。これもお客さんのご希望で、ブラインドキャップの表面に溝を設けていないので、閉じた状態では外側からは分かりません。

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納品(発送)前に改めて握って見ると、樹脂製の一般に売られている万年筆よりも太い軸だけあって、その安定感に「これはいいな~」と実感しました。依頼主様のアイディアに、また一つ勉強(+技術習得)になりました。もちろんオリジナル万年筆製作の場合は、首軸を含めた全製作やクリップ、キャップバンドの有無など選択は色々ございます。

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