紛失した首軸作り / DELTA DOLCEVITA

どのようないきさつか分かりませんが、首軸パーツのみを紛失してしまったという万年筆の首軸製作のご依頼を頂きました。ドルチェヴィータのミディアムです。幸い、ペン先とペン芯はお持ちで一緒にお預かりしました。デルタは近年廃業してしまったメーカーで、日本の代理店もすべてのパーツ供給の停止を余儀なくされたそうです。

例え破損していても、元のパーツがあればそれを見本に作るのが普通ですが、前述の通り今回は想像で作らなければなりません。

元のパーツがないとどこまで忠実に出来るか分かりませんとお伝えしましたところ、「形になって実用できれば何でもかまいません」との事でした。

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当時のカタログがあるので、写真で大体の形は分かります。もう一つ問題が。それは実際の長さ=首寸が写真からは正確には分からないという点です。通常ネジ式のキャップは閉める際、首軸の端面とキャップ内部の段(インナーキャップ等)が当たりストッパーとなります。ゼロから首軸を作る場合、首寸が短いとキャップを回す動作が長くなり、反対に長過ぎると今度は回す時間が短くなりキャップが自然に外れてしまう恐れがあります。つまり不安定に・・・。ところが幸いにも、丁度別の修理依頼で同じデルタの一回り細い万年筆が届きました。首軸のサイズもやはり一回り細いですが、形はほぼ同じようです。そして首軸を仮に取り付けると、キャップの閉まり具合がピッタリでした。つまりこの細軸も、今回の首軸無しのミディアムと首軸の長さは同じなのは間違いありません。ということでこれを実物見本に、製作に取り掛かります。

写真は首穴を空け、胴軸との接続ネジを切り終えたもの。

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このまま一旦胴軸を閉めて、ネジの締り具合を確認します。

きつければ、もう少しネジを切り直します。

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最後に、見本通りの形に削ってくびれを再現し、切削作業は完了しました。

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耐水ペーパー、バフ掛け、水洗いをしてようやく完成。

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ペン先・ペン芯を取付け、インクで筆記して調整。ようやく完了となります。

エボナイトで作ったため、厳密には首軸だけ他と材料が異なります。

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