ホワイトスター付き天冠の製作 / Montblanc Meisterstück 139

ご覧のように、えらくバラバラになってしまったモンブランセルロイド製キャップトップ。元はNo.139と言う1940年代の大型万年筆のクリップ上に来る天ビスでした。完全に元に戻す事は不可能なので、今回全く同じ形に製作して修復しました。

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抜け落ちたホワイトスターを裏返した状態。

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先ずは採寸から始める訳ですが、少しでも正確に元のサイズを測るため接着剤で仮止めをします。まんま立体パズルです。

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エボナイトを削って、切削します。写真はキャップスリーヴに取り付けるネジを切り、クリップ受けの内溝を設けたところです。穴の内径や深さも少しずつ削って調整していきます。胴軸にペン先を取り付けて、脇とペンポイントが当たらないよう、且つなるべくすれすれに行います。その方がキャップを閉じた時のインクの気密がより保てるからです。インナーキャップのない時代、この天ビスの内寸が気密=万年筆の性能の一部を左右していたのですね。

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クリップ、キャップスリーヴを仮付けして形や収まり具合に問題がなければ、残りの材料から切り離します。

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ここからが一番難しい作業。ホワイトスターがぴったり嵌るように、手で削ります。ここからは窪みの丸穴以外、轆轤が使えないからです。ちょっと隙間が目立つので、この1個は駄目です。また一から作り直さなければなりません。

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何回か失敗を繰り返して、ようやく形になりました。見た目隙間がほぼない状態まで持って来ることはもちろん、ホワイトスターを上から少し力を入れないと入らないぐらいでないと安定しません。

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これら、全部失敗した天冠なんです! 何気なく写真に収めてますが、切削からスタートして最終の星形に削り出している段階で、失敗(隙間を出すこと)が分かった瞬間はとても暗い気持ちになります(>_<)

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ホワイトスターを仮付けして全研磨を終えたところ。まだムラや隙間が若干見えるので、ホワイトスターを外して天ビス表面のみ少し削って微調整をします。

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オリジナルと違和感ない仕上がりを見せ、やっと完成してくれました。

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他のご依頼個所であるペン先研磨・調整を最後に行い、いざ納品へ。因みにモンブランのホワイトスター付きの天冠製作は初めてだったこともあり、ここの製作だけでほぼ丸二日は掛かってしまいました。このキャップトップ一体のホワイトスターは、今も昔もモンブランの顔ともいえる個所ですね。

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