ハイブリッド胴軸の製作 / Montblanc 136

モンブラン136 の胴軸修理依頼がありました。インク窓の上部にクラックが数か所と、ネジで接合された下部の一部欠損等々、オリジナルの胴軸を直して使うには手が付けられない状態でした。そこで持ち主様に胴軸製作での対応しかない旨をお伝えし、製作・修理となりました。

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一旦ペン先&ペン芯を取り外し、軸もすべての構成パーツを取り外して作業に入ります。

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先ずはメインの材料となるアクリル材から削り出していきます。いきなり寸法通りの内径で穴を空けると、大きく傷を付けるか途中で破損させてしまうため、少しずつ削ります。

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今回は失敗例もお見せします。このような吸入式の胴軸をアクリルで作る場合、2個3個と途中で割れてしまうことはよくあります。荒削りの段階ならまだしも、上下のネジまで切り終わってから、バリッといくと結構ショックは大きいです。

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気を取り直して、ベースを完成させました。写真は仕上げ研磨を終えて、インクの吸入チェックまで終えた状態です。

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機能的な製作が終わったら、今度は外観もオリジナルに近付ける必要があります。アクリルで完成した胴軸の一部を削り、全体の1/3ほどをエボナイト材を被せる形で接合します。オリジナルがセルロイド一体+塗装に対し、これは2種類の材料を組み合わせて作ったので、ハイブリッドと言えますね(笑)。

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それが終わったら、オリジナルに近い色合いに配合した染色剤で加熱染色を行います。

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アクリルの表面に4条ネジを切るのは、エボナイトやその他の樹脂で行うより難しいです。特にアクリルはネジ切りの刃物が滑りやすく、おまけに透明なのでネジの始まりの位置や溝の深さがとても見辛いのです。更に外ネジは、先に切った内ネジが裏からそのまま見えるため、見えにくいどころか途中から勘に頼る部分もあります。つまり内ネジと外ネジが重なって、半分見えていないと言っても過言ではありません。

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上2枚の写真はあくまで外見上の完成。再び吸入機構パーツ、ペン先・ペン芯を取り付けます。筆記のチェック、そして実際にインクを入れて数日間様子を見ます。インク漏れ等がないことが確認できたら、ようやく完了となります。

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2本まとめて胴軸製作 / Montblanc 142&146 Green-Stripe

以前モンブラン146( テレスコープ)緑縞のインナーバレル(内胴軸)を製作した記事をご紹介しましたが、今回は14X シリーズ最小のNo.142、前回と同型146 を同時に行いました。依頼者様はそれぞれ別の方ですが、お預かりが重なったので効率よく2本同時に修理しました。142は前回と同じ方法で、そして146は+α の修理でした。

まずは142 の作業工程から、ご紹介します。前回(No.146)はインナーバレル製作+アウターの縞軸を被せる方法で成功しているので良いとして、146でもギリギリだった作業がそれより二回りも小さい142 果たしてで出来るかどうか自信ありませんでした。142 の依頼者様にも、お受けする際に「出来るかどうか約束できませんが・・・」とお伝えしてはいました。

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首軸ネジ箇所のクラックにより、インク漏れを起こす1本だったそうです。その後、クラックが進行して、写真のようにパネル状に剥がれ落ちてました。

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首軸を取り外すと、大穴が貫通している現状がお分かりいただけると思います。ここまで来ると、接着剤やパテ等の補修では直りません。またネジから上を別材料で作って継ぎ足しても、ある程度の衝撃に耐えられなければなりません。従ってネジから胴軸下部まで一体のインナーバレル製作方式が確実だと判断しました。

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吸入機構を一旦取り外します。

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破損個所を、クラックの始まりまで削り落とします。

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これから作るインナーバレルが収まるだけの内径(削って)にします。ここで大切なことは、決めた径まで一気に広げるのではなく、刃物(平ギリ)を何度か替えて段階的に削ります。一発で削ろうとすると、胴軸をパリッと割ってしまうか、削りの熱で胴軸内面→表面と波打ってしまうことのリスクもあります。

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内径を広げる加工が終わりました。肉薄になったお陰で、ちょっとした光でもオリジナルでは見られない透明度になりました。

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透明アクリルを削って、インナーバレルを製作します。

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先程の削り取った胴軸スリーヴ嵌めて、微調整の削りをします。やはりここの被せる作業も慎重に行わないと、ちょっと硬い状態で無理に押し込んで縞軸をパリッと割ってしまいます。

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今度は上下逆にセットして、ネジ切りを行います。

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インナーバレルが完成したら、吸入パーツや首軸を仮付けして、吸入・排出のチェックを行います。

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142修理の途中で実際の作業は前後してしまいますが、146緑縞の修理写真です。142のケースとはちょっと違い、首軸からのインク漏れを食い止めるために依頼主様ご自身で、何度か接着剤を塗布しています。そのため、接着痕などで首軸表面が大きく変形を受けています。また結果的に首軸と胴軸の接続個所にも接着液が回ったらしく、首軸が完全に固着して外せません。=吸入ガスケットの交換作業も出来ない事になります。

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全く開かないので、これ以上の修理継続には破損のリスクが伴うこと、それをご説明して続行の了承を得ました。結果、開かないまま首軸くびれ部に大きなクラックを発生させてしまいました。首軸を活かしての接着・補修はここまで来ると不可能と判断し、胴軸との完全切断、そして首軸を製作して対処することになります。

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削って首軸を取り外しました。今度は胴軸側の切削加工です。

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ここからは142と同様、インナーバレルを埋めるための内径加工をしました。まず見る事のできない、肉薄状態にまで持って来ました。

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インナーバレルの製作。

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完成したインナーバレルを並べました。下が142用、上が146用です。まだ削り粉や油で汚れたままです。

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後で胴軸スリーヴを被せた時に、外ネジだけ白の半透明だと見た目全体のバランスを崩してしまいます。そこで違和感を最小限に抑えるため、半透明の緑色で染色。

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吸入機構を仮付けしたところ。

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オリジナルの首軸の代わりに、ダークグリーンの樹脂を削って製作しました。写真では黒く見えますが、実物は前述のダークグリーンです。

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作業の方は完了しました。上が142、下が146です。この後モニターインクを入れて、インクが後から漏れることなく吸入出来るか、またネジの間から滲み出ないかを数日かけて経過観察を行います。

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No.142と削り取った元のネジ部。

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この配色を意識した方法は、ペリカンの茶縞やオスミア/ファーバーカステルの濃緑縞(アルプゼー・グリューン)を参考にしました。すなわち茶縞の胴軸にネジから上がダークブラウン、ファーバーカステル(1950年代)はダークグリーン縞の胴軸にダークグリーン単色の首軸というコントラストでした。

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ペリカンの首軸装飾リング製作② / PELIKAN M800 Wall Street

内容が似た修理記事が続きますが、今回も首軸リングの製作による修理です。数か月前に同じペリカンはM400 を採り上げましたが、今回はほぼ同じ内容でM800 になります。依頼主様がある社外品のインクを使ったところ、リングに腐食が起こったため、メーカー(輸入代理店)にパーツ交換の問い合わせをされました。ところがこの万年筆が少し古い限定品だったこともあり在庫はなく、「首軸部分総取り替えになり限定品固有の濃いグレーでなくなってしまう、インク窓(グレー)も一般品のインク窓(グリーン)になってしまうので諦めた」そうです。写真では見えづらいですが、ウォールストリートは首軸、尻軸、キャップスリーヴがすべて青みがかったグレーで統一されています。ここを定番モデルに変えてしまうと、インク窓のみならず首軸も黒になってしまいます。

前置きが長くなりましたが、作業途中の写真です。接着されているらしく、削り取らないと外れないため、少しずつ慎重に削ります。

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幾らか削ったところで、自然に首軸本体からリングが外れました。そして首軸側に残った接着滓を、やはり削る要領で取り除いていきます。

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同じ形に真鍮で製作しました。手前の2個が作った物で、上は取り外したオリジナルです。

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ぴったり合うか、仮付けして確認します。真横から見てリングと首軸の間に僅かに隙間があります。ちゃんと隙間なく奥までぴったり嵌るよう、一旦外してリング内径を僅かに削る微調整を繰り返します。

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外観と合わせ具合が問題ない所まで出来たら、オリジナルと同じように表面に金メッキを施します。前回のM400 のオーナー様がメッキを希望されなかったのに対し、今回は金メッキでのご依頼でした。お客さんによって費用や見た目等で、ご注文の内容は様々です。 ※写真、少しピントが合ってなくて済みません(;'∀')

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メッキ加工が終わったら接着によるシーリングを経て、修理完了となります。

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今回の依頼主様、M400 の時の修理記事を見て修理依頼を決意されたとのことです。当工房のブログ記事が役立って、光栄でした

 

 

 

 

パーカー75 首軸リング製作② / PARKER 75 & Premier

パーカー75の首軸(セクション)リング破損・欠損による修理依頼がまとめて来たため、一挙に行いました。以前も首軸リング製作の記事を書きましたが、今回は3種類のリングを各々製作・取り付けました。言い換えれば、3本とも持ち主は別で3名ともそれぞれ異なるバリエーションを選んだ事になります。正確には75が2本、同じ75をベースとした80年代のフラッグシップモデル、プリミア(一番上)になります。そのリング3種類とは、①エボナイト製 ②真鍮製 ③真鍮+ロジウムメッキで料金もそれぞれ異なります。

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写真のように、2本はキャップ内で外れてしまったそうで、工房に送られて来た時点でリングはありませんでした。当然、嵌合が活かせずキャップが安定して閉まりません。一番左(スターリングシルバー)は、金メッキのバンドから上の樹脂がボロボロ崩れて、インク漏れを起こしていました。

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修理の作業に入ります。ただリングを製作して付けるという単純なものではなく、古いリングを取り外して、残って固着してしまった樹脂を綺麗に削り取らなければなりません。(※中期までのUSAメタル製リングを除く) ネジ溝に糊のように食い込んでしまっているため、ただ削るのではなく同じピッチのネジで切り直す要領且つ元のネジを摩滅させないようにしなければならず、最も注意を要するところです。当然この下仕事をしないと、リングを作っても取り付けられません。

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固着していた樹脂の残り滓。削り取る前は大した物に見えなくても、結構な量です。

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75バーガンディ・ラッカーのオーナー様は、価格がお手頃なエボナイトを選ばれました。リングを製作・取付、シーリング作業のすべてを終えた状態です。一番お安いと言いましても、決して機能的に劣ることはなく、むしろオリジナルのプラスティック/金バンドより堅牢で実用的です。とある別のお客さんは、お値段よりも首軸全体が黒一色になるのが気に入って注文された程です。インクの腐食にも強く、私もお勧めします。

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プリミアのオーナー様は真鍮の無垢版を選ばれました。ご存知、真鍮(ブラス)はすぐに表面が黒く曇りますが、やはり腐食に強いとても実用的な素材です。こちらを選ばれるのは、くすみも味と捉える方が結構いらっしゃいます。

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そして最後に、予算も少々割高ですが真鍮製作+ロジウムメッキです。こちらの75 スターリングシルバーは初期のUSAタイプで、元々目盛り付きメタルカラー版です。オーナー様によると一旦壊れてメーカーに修理に出したら、後期のゴールドメッキバンド(FRANCEタイプ)に替えられた上、程なくまた破損してしまったそうです。それで今回の修理を機に、オリジナルカラーに近いロジウムメッキを選ばれました。

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どの材質でリングを製作する場合も同じですが、インナーキャップのバネ部にパチンと嵌るよう、調節しながら削ります。リング製作で一番難しいところです。

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3本すべて修理完了しました。ひと月の間に、パーカー75系のセクションリングの修理依頼が3本も来た上、依頼者様全員違うバリエーションを選ばれるのは非常に稀でした。

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ボールペンの修理 / PARKER Jotter

パーカーの超ロングセラーである、ジョッターシリーズのボールペンをお直ししました。リフィル交換の時に開ける、胴軸側のネジが折れて真っ二つな状態です。ご依頼のジョッターは見た目は現行とほぼ変わりませんが、50年以上前のジョッター初期型のようです。実はお問い合わせ時に一度メーカーへの修理依頼をお勧めしました。現行品やメーカーのアフターサービス対象品はお受けしていない上、このボールペンは修理代で新品が買えてしまうぐらいのお値段だからです。しかしどうしても思い出の軸のまま直して欲しい、とのご希望でしたのでお引き受けしました。

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切断して破断の傷を綺麗に削っていきます。ここから別の材料を削って、接着して埋め込むのです。

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接着が済んだら、リフィルがスムーズに入る程度の穴を空け、ネジを切ります。左は近年の同じジョッターです。ネジのピッチが全然違います(現行モデルの方がネジピッチが遥かに粗い)ので、どの道現行のパーツと取り換えても合わないことになります。

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キャップチューブを閉めて、修理が完了しました。ノックして調子よく芯の出し入れが出来ますので、これまで通りお使い頂けます。今回の修理加工費3,000円+税で、前述の通り新品のジョッターが買えてしまいます。しかし、それをご承知で修理を依頼される方も結構いらっしゃいます。それだけ思い入れのある道具だからこそなのですね。

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万年筆製作日誌② 

前回の製作日誌①に続き、同じ方から再度ご注文を頂きました。

万年筆製作日誌① 国産現行カートリッジ式のボディ作り - 筆記具工房のブログ

今回はもう少し大き目のサイズです。ペン先・ペン芯、そして真ん中に来るカラーエボナイトをお預かりしての製作でした。この単色カラーエボナイトは刃持ちが悪く、削りより研ぎばかりで予想以上に大変な作業でした。

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前回は胴軸とキャップのみを製作し、首軸を含めたペン先ユニットはメーカー既存の物を流用しました。一方、今回は首軸やコンバーターと接続するソケット等もすべて製作します。

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写真では首軸・胴軸(ライムグリーン)、そしてブラインドキャップの3つのパーツが一体になっています。実際はネジで閉めただけで、ここをブラインドキャップの底から、+1.5mmぐらいの所で切断します。

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研磨・洗浄してボディが完成しました。プッシュ式のコンバーターが簡単に操作できる位置に、ブラインドキャップ用のネジを設けました。インク吸入の動作は、パーカー・ビッグレッドのボタンフィラーと同じ要領になります。

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ナタ研ぎ調整依頼

長刀研ぎ調整のご依頼を受け、その研ぎ出しの工程を一部ご紹介します。ご依頼の内容は、字幅を国産のM-MFの間で使い分けられるようにして欲しいというものでした。依頼者様からお預かりしたペン先は極太字のBB。かなり削り落とす事になります。つまりやや寝かせた状態で中字で、そこからペン先を立てるに従って中細字で書けるように研磨・調整を行う訳です。

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研ぎ出し前の、何も手を加えていないペンポイント。

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20分ぐらい研磨して、研ぎそのものはまだ50%です。

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大体85%ぐらいまで削り、角張った面を落としました。後はインクを付けて試し書き・微調整を繰り返します。この時点でやや書けるようにはなっていますが、まだ思うような字幅ではなく、また角度によってざらつきを感じます。

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完成間近の試し書き写真です。後は中細をもう少し細い字が書けるように仕上げて、一応の完成です。更にご本人様が引取りに見えた際、実際に握って頂いてご要望通りに(対面で)最終調整をします。

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 『長刀研ぎ』というのは、ご存知あるメーカーの特殊ペン先で名前も商品名だったと思います。全くと言って良い程知られていませんが、これとは別に『ナタ研ぎ』という名称はもっと前からありました。どうもこの『ナタ研ぎ』が長刀研ぎの名前の参考になったのではないでしょうか。数十年前まで、日本に輸入されたパーカーやモンブランの極細ペン先の研ぎが、今とは違いペンポイントの左右がかなり落とされた物でした。これを横から見ると”ナタ”のように見える事から、検品の職人に『ナタ研ぎ』と呼ばれました。最も、実際の長刀研ぎとはややペン先の仕上げも性格も異なります。さて過去たまに長刀に近い調整を依頼される事はありましたが、あまりタッチして来なかったので、今後もう少し研究してゆく必要性を感じました。