一口に修理と言っても、修理方法が一つしかない場合もあれば、二通り以上ある場合もあります。今回はあまりお金をかけない例をご紹介します。
ペリカンの1970年代のカートリッジ式です。カートリッジ交換をする際に胴軸を開ける訳ですが、そこの首軸側の繋ぎ目のネジ部分が折れてしまっています。このまま閉じても、グラグラしてとても筆記出来ません。
ねじの大部分が、胴軸側に残ってしまっています。
取り出し成功。
今回限られた予算の中でベストは何かと思案した挙句、工房のストック品で同時代のペリカーノ(破損品)から移植することにしました。ご依頼の万年筆が14Cペン先であるのに対し、ペリカーノはペン先もキャップもスティールである以外、デザインや機構は基本的に同じ物です。もう一つ、同時代のモンブラン等と違って全パーツが接着されているという欠点があります。それはつまりペン先交換以外、修理やメンテを考慮されていない設計だったのですね。まあ、時代も時代と言ってしまえばそれまでですが・・・・・・。
さてねじ部分を移植するために、ペリカーノ側を切断&加工します。
次にご依頼品側を、ペリカーノから取った部品がぴったり合うように内部を加工します。
これでぴったり合いました。
接着して、移植による修理は完了です。
吸入器(コンバーター)を装着したところ。加工と接着で繋ぎ目の透明度がやや落ちましたが、持ち主様のご依頼は「実用優先」です。
これで再び普通にお使いいただけます。
結論になりますが、他の修理方法は以下の通りで断念しました。
①首軸を丸ごと取り換える → 同じ物を1本丸ごと入手=予算オーバー
→ 首軸のみの入手=バラでの入手は困難
② 破損個所をこちらで製作・取付け → ねじの種類が特殊で工具を買わなければならない。更に加工時間も加わるので、これも予算オーバー
修理を依頼される際は、可能な範囲でご予算に応じた方法でも承ります。