キャップ縁の修復 / Montblanc Limited Edition Agatha Christie

モンブランの作家シリーズ(限定版)、アガサ・クリスティーのボールペンのキャップをお直ししました。キャップの縁の一部が、大きく欠損してしまっています。一旦残りの部分も削り取って、同じ黒い樹脂材を使って縁部分を作って接合する方法を採りました。

 

キャップを加工するため、一旦轆轤に取り付けます。装飾リングを傷つけないよう、マスキング。

 

リング下端を境に、縁をすべて水平状に削り取ります。しかし、この端面のみの材料接合では、強度不足となってしまいます。そのため、さらにリングの裏側も一部削ります。

 

リングの裏、下半分を削り取りました。つまりリングの半分も接着しろとして活用して安定させます。次に、これから接合する縁部分を作ります。材料は黒いセルロース

 

接着剤なしの、仮接合。手でグッと押してグラつかないようであれば、接合面の加工は終了。

 

材料の丸棒からカットし、端面のみ削って整えました。

 

控えておいた寸法通りに、削ってオリジナルの形に近付けていきます。

 

刃物傷を研磨、艶出し研磨。縁の修復が完了しました。リングの上下、キャップ本体と縁が違和感がなければ良しとします。

 

新たに使った材料は衝撃に強く割れにくいため、オリジナルより強度は上げられたと思います。写真ではお伝えし難いのですが、一番難しかったのは接合そのものより、作った縁の内面の加工でした。ここは胴軸に取り付ける際、内部のメタルパーツを覆い、且つスムーズに回転(ツイスト)できるよう、何度も削りの微調整を行う必要がありました。内面が少しでも触れればツイストの動作が硬くなり、安定した新の出し入れができません。逆にいたずらに削ると、ただでさえ薄い縁をさらに薄くさせて強度を落としてしまいます。